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猫の毛色と性格<後編>

前編に続き、猫の性格について専門家のお話を紹介します。
性格の決まり方や人気の猫種の特徴などを見ていき、
毛色だけでは判断できない猫の性格の奥深さと、
家庭に合う猫を迎える方法を確認しておきましょう。

お話を伺った先生加隈 良枝 准教授
(帝京科学大学)

帝京科学大学アニマルサイエンス学科准教授。1995年東京農工大学農学部環境・資源学科卒業。2002年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。同大学院博士課程在学中に英国エジンバラ大学にて大学院応用動物行動学および動物福祉に関する修士課程を修了。帝京科学大学アニマルサイエンス学科講師を経て、2013年から現職。専門分野は、応用動物行動学、動物人間関係学、動物福祉。

INDEX

猫の性格はどのように決まる?

遺伝、社会化期の過ごし方、飼い主さんの接し方などが影響します

猫の性格は、遺伝、社会化期の経験、生活環境、飼い主さんの接し方など、さまざまな要因が複雑に影響して形成されていきます。毛色によって性格にある程度の違いがあることはわかっていますが、毛色は一つの要因にすぎません

遺伝

例えば、活動性や攻撃性に関わる神経伝達物質のはたらきは、遺伝的に影響する部分があります。

社会化期の経験

猫の社会化期は2〜7週齢と早く終わるので、ペットショップやブリーダーから購入した場合、すでに社会化期が終わっています。離乳が早い場合や社会化が不十分であれば成長後の不安が強くなり、問題行動が増えるケースもあります。

生理的な要因

空腹の時間が続くと攻撃的になることも。また、体内のさまざまなホルモンの影響で、興奮しやすくなることがあります。

飼い主さんの接し方

欧米の猫は甘えん坊で、日本の猫は素っ気ない傾向があります。その理由はおそらく接し方の違いです。愛情を体で大きく表現する傾向がある欧米人は、同様にアピール力の強い猫を好み、ブリーディングも熱心に行ってきました。一方、日本人はさっぱりした接し方で自由気ままな猫を好み、繁殖にも積極的に手を加えなかったのです。

ほかにも、高齢になると新しいことが受け入れられず、頑固さが出てくることもあります。逆に活動性や意欲の低下でおだやかになることも。ただし「猫の性格が変わった」と思ったら、実は関節炎による痛みが原因であまり動かなくなったという場合も。念のため動物病院を受診しましょう。

専門家へ実施した「猫の行動調査」の結果は?

2009年に発表された行動学専門を中心とする獣医師67人に実施した「猫の行動調査」のアンケート結果を紹介しましょう。

出典:Behavioral Profiles of Feline Breeds in Japan(日本 Takeuchi & Mori, 2009)

品種差があらわれた行動特性

日本猫を含む12品種の猫の行動調査の結果、「猫への攻撃性」「一般活動性」「新奇探求性」「興奮性」はオスの方が高く、「神経質」「不適切な排泄」はメスの方が高いという性差があらわれ、品種差では「攻撃性・神経質」「活発・陽気」の2つの因子スコアに差があらわれました。

前編では短毛種は活発で、長毛種はアクティビティが低めの傾向があることを紹介しました。また、毛色についても傾向をお伝えしましたが、回答結果を見る限りそれが当てはまる猫種もいれば、そうではない猫種もいるのがわかります。日本で育成されたことで違いが現れているのかもしれません。

人気猫種8品種の行動特性

人気猫種の代表的な8品種は繁殖の積み重ねにより行動特性に違いがあります

※各品種の典型的な行動特性の特徴を紹介しています。個々の性格や行動特性には個体差があります。

①アメリカン・ショートヘア

たくましい体つきで温厚でフレンドリー、比較的飼いやすい性格です。活発さがそれなりにあり、順応性を持ち、物怖じせず遊び好きです。

②スコティッシュフォールド

スコットランドでみつかった雑種の猫の突然変異固定化した猫種とされるので、環境の変化に動じにくく性格も安定しています。名前の通り「折れ(fold)耳」が特徴。骨軟骨異形成症を発症しやすく、“スコ座り”というあぐらをかいたような独特な座り方をすることがあります。遺伝上、健康問題が起こることがあるため、現在折れ耳同士の交配は禁止されていて、折れ耳になる割合は約30%といわれています。

③マンチカン

誕生して間もない新しい猫種であり、もともと雑種の猫の突然変異を固定したものなので、性格の傾向はそれほど定まっていません。スコティッシュフォールドと同じ骨軟骨異形成症の後発品種で、変形性関節症になりやすいおそれが指摘されています。足が短い分、高いところへ移動したり離れた位置のものを取るために、後ろ足で立ち上がったりジャンプしたりしやすいので、活発に見えるかもしれません。一方、おだやかなタイプもいます。

④ノルウェージャン・フォレストキャット

寒冷地の土着の雑種を固定化した猫種です。長毛種の中では野性味が強く残っていて、優れた狩猟能力をもち活動的でありながら性格は穏やか。そのため、古くからネズミ捕り用の猫として家庭でも大切にされていたという猫種です。

⑤メインクーン

大きくたくましい体をもち、ノルウェージャン・フォレストキャットと同じく、長毛種の中では活発なタイプです。おおらかで知性が高く力持ち、ボールを投げるとくわえて持ってくる子も多いなど、トレーニングしやすいといわれています。

⑥ベンガル

ベンガルヤマネコと(家畜の)イエネコを交配して生み出された猫種で、ワイルドな性格の持ち主です。その割に甘えん坊の一面もあるので国内外でも人気の猫種です。ハンターとしての気質が残っていてとても活動的なので、狩猟本能を満たすような遊びを心がけつつ、興奮させすぎて人が攻撃対象とならないよう注意する必要があります。しっかりと運動できるスペースを準備してあげましょう。

⑦ラグドール

「抱き人形」という意味の猫種名で、その名のとおりおだやかでおとなしい性格です。中には遊び好きのタイプもいます。シャム猫等と同じようなポイントカラーが特徴的ですが、これは濃い色をつくる酵素の遺伝子の品種特有の変異で、温度が低いほどはたらきが強まるため、鼻先、耳、尾、足先などの冷えやすい部分は色が濃くなります。

⑧ペルシャ

アクティビティが低く、あまり活発ではありません。おだやかで落ち着いており非常にマイペースな性格の猫種です。さまざまな毛色や柄の種類があり、短く低い鼻が特徴的です。遊びや運動をするよりも気に入った場所でくつろぐ方を好む傾向が高いです。

<番外編>雑種猫

一般社団法人日本ペットフード協会の2019年の「全国犬猫飼育実態調査」では、日本で飼育されている猫の約75%が雑種猫(ミックス)という結果がでています。日本で古くから生きながらえてきた遺伝子を持つ土着の猫同士の交配により、純血種と比べ、特定の遺伝的疾患を持ちにくく、体が丈夫であることから寿命が長い傾向にあります。また、豊富な毛色や柄も魅力です。

家庭に合う猫を迎えるために知っておきたいこと

飼い主さんと猫の「ミスマッチ」を減らすことが重要です

飼い主さんに「愛猫を選んだ理由」を聞くと、海外でも日本でも「毛色」という回答が多くを占め、現在も見た目の違いが重視されていることがわかります。しかし毛色だけでなく、性格で判断することもミスマッチを減らすための重要なポイント。

例えば猫カフェで猫と触れ合う、飼い主さんに聞く、ネットの動画を見るといった方法で、猫の行動パターンや品種ごとの特徴を知っておくのも良い方法です。人間に積極的に寄ってくる猫は甘えん坊、遊び好きの猫は活動的など、猫の性格を行動で見分けられるようになります。品種によってお手入れの必要性なども異なるので、飼い主さんと猫のミスマッチを減らし、家庭にぴったり合う猫を迎えましょう。

飼い主さんの適切な接し方で怖がりの部分を減らしたり、フレンドリーなところを伸ばしたりすることもできます。ただし、性格を変えるのが難しい場合も。互いに折り合いをつけることも猫との幸せな暮らしのかたちです。