猫の生態と習性

不思議に見える猫の体やしぐさには、1万年前の祖先から受け継がれて来た生態と習性が関係しています。猫が要注意の腎臓疾患も、実は祖先の生活に秘密が。自由気ままな性格や優れた狩猟本能の理由なども合わせて紐解いてみましょう。

猫の祖先はリビアヤマネコ

人の身近で暮らす猫(イエネコ)の祖先は、中東の砂漠地帯に生息しているリビアヤマネコです。約1万年前頃から、中東の農村にネズミを追って移って来たと考えられています。収穫物を狙うネズミに困っていた人々も大助かり。やがてかわいらしさや自由気ままな振る舞いが愛され、世界中へ広まっていきました。

水が少ない砂漠に適した
腎臓を持つ

水が少ない砂漠地帯で生活していた名残で、猫はわずかな飲水量でも生きられる体のしくみを持っています。水分を体内で有効に使えるよう腎臓で尿を濃縮するので、腎臓に負担がかかりやすい傾向にあります。猫の長寿化によって高齢になると慢性腎臓病を抱えるケースが増加。さまざまな分野で治療法が研究されています。

猫は生まれつき優れたハンター

リビアヤマネコをはじめ野生のネコは基本的に単独行動です。家族や仲間と行動するのは繁殖など限られた時期だけ。自力で獲物を狩り、外敵から身を守るため、警戒心が強く慎重な性格です。祖先の狩猟本能を強く受け継ぎ、現代の猫も狩りが大好き。室内飼育で狩りをする必要がなくても、おもちゃを獲物に見立てて遊びます。

明け方と夕方に活動的になる

猫は日中に休み、明け方と夕方に活動する「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」です。これは獲物となるネズミなど小動物の活動時間と同じで、効率よく狩りをするための知恵と言えるでしょう。砂漠地帯で暮らしていた名残で、暑さが厳しい日中に休んで体力を温存していたことも考えられます。寝てばかりいるように見えますが、実は省エネが目的です。

縄張りは大切なスペース

単独行動をしてきた猫は、自分だけの縄張りをつくります。安心できる寝場所があり、生きるために必要な食料や水を確保した大切なスペース。室内飼育の猫でも縄張りを持っていて、爪とぎや頭をスリスリするマーキングで自分の縄張りを主張します。多頭飼いの場合、「部屋の数≧猫の数」が理想。部屋の数よりも猫の数が多いと縄張りが重なることでトラブルが起きることもあるので注意を。

内田 恵子 獣医師
監修
内田 恵子 獣医師

元ACプラザ苅谷動物病院統括院長。JAHA内科認定医、JAHAこいぬこねこの教育アドバイザー。小動物臨床に35年間従事した後、現在ペットの動物病院でのストレスを軽減し、問題行動を作らない技量を広めるため活動中。