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犬のトイレのしつけ
失敗する理由と成功のコツ

「トイレの場所を覚えてくれない」「よく失敗して掃除が大変…」「トイレのしつけ方がわからない」といった
トイレに関する困りごとは、多くの犬の飼い主さんが抱える悩みのひとつです。今回はそんな、
犬がトイレを失敗する理由とトイレの正しいしつけ方について、
JAHA認定家庭犬しつけインストラクターの矢崎潤さんにお話を伺いました。

お話を伺った方矢崎 潤さん
(JAHA認定家庭犬しつけインストラクター)

公益社団法人 JAHA(日本動物病院協会)認定家庭犬しつけインストラクター 同協会インストラクター養成講座委員会アドバイザー/公益社団法人 日本愛玩動物協会講師/日本獣医生命科学大学 非常勤講師/帝京科学大学 非常勤講師
「ほめるしつけ」がポリシー。犬の行動学と学習理論、動物福祉に基づくトレーニングスタイルは、わかりやすく、安全かつ効果的と多くの信頼を得ており、環境省をはじめ、動物行政関係者向けの研修会の講師、民間愛護団体でのセミナー等でも指導を続けている。著書に「幸せな子犬の育て方」大泉書店、「犬のしつけきちんとブック」シリーズ(トイレ、吠え、留守番、咬みグセ)高橋書店などがある。

ライター:山ノ上ゆき子

INDEX

犬に必要なトイレグッズ

犬のトイレのしつけは、いつから? それは、犬を家に迎えたその日からです。室内で犬と一緒に暮らすために必要なトイレ用品は、トイレシート、トイレトレー、サークルなどになります。まずは、排泄してほしい場所に設置して、犬がトイレの場所をしっかりと把握し失敗なくできるまでがトイレのしつけを考えましょう。最初のステップとしては、サークルを利用して、トレーニングするのがオススメです。きちんと集中的に行えば、トイレのしつけにかかる期間も短くなるでしょう。根気がいりますが、これから過ごす長い時間を見据えて、ぜひ迎えてから早い段階のうちに取り組んでみてください。

トイレシート

トイレシート

犬のオシッコをきちんと吸水してくれ、部屋を汚さず清潔に保つことができるのが犬用のトイレシートです。犬の排泄スタイルの好みには個体差があり、一度排泄したシートではもう排泄しないタイプもいれば、同じシートに複数回排泄できるタイプもいます。排尿のたびに取り換える薄型から、消臭・抗菌効果が高く吸収量が多い厚型、小さなシートをオシッコ跡の上に重ねて貼ることで、1枚のトイレシートをより長く使えるようにし、交換回数やゴミの量を減らす「Reduce(リデュース)」の考え方を取り入れた製品もあります。ワンちゃんの排泄傾向に合わせて、最適なシートを選ぶと良いでしょう。

トイレトレー

トイレトレー

犬のトイレシートを固定し、床に尿が漏れないようにするがトイレトレーです。フチが少し高くなっていて、段差があるため、トイレと床の境目が犬にわかりやすくなっています。トイレトレーは、トイレシートとサイズを合わせて用意しましょう。トイレシートの端を挟み込むフラットタイプをはじめ、はみ出し防止のためにフチが壁のように高いタイプ、トイレシートを破くいたずら防止のためにメッシュ状のカバーでシート全体を挟むもの、オス犬に多い片足を上げて排尿するタイプ向けに、壁への飛び散りを防ぐL字型のタイプなどがあります。

サークル

サークル

サークルは、四方を柵で囲い、扉を開閉が可能で、空間を区切ることで、トイレ場所を理解しやすくするためのグッズです。犬の行動を管理・監視しやすい空間をつくりやすいです。また、ホームセンターなどで販売しているベースとフェンスと固定具を組み合わせて、自作する方も多いほどカスタマイズ性が高いものです。犬がしっかりトイレを覚えるまでは、サークル内にトイレを設置してトレーニングしましょう。

犬は、人間がトイレの場所を
教えなければ覚えてくれません

人間家庭で家族として暮らしている犬たちですが、本来、犬は一か所で排泄する習慣のない動物です。実は「トイレを失敗する」という悩みの多くは、愛犬にきちんとトイレの場所を教えられていないことが大きな要因として考えられます。犬用のトイレトレーにトイレシートを用意しただけでは、その場所に排泄してくれるようにはなりません。排泄は必要不可欠な生理現象ですので、人と同じく犬も気持ちよく排泄したいものです。ただし一方で、一緒に生活する人間にとっては家中のあちこちで排泄されては困ってしまいます。お互いに心地よく暮らしていくためには、トイレ環境を整えて、室内で排泄していい場所、そこでしたら良いことが起きることを愛犬にきちんと教えていく必要があります。

監視と管理をきちんとすることが覚えてもらう近道

トイレのしつけの基本は、「犬に成功体験を重ねること」になります。そのために重要なのが、飼い主さんの監視と管理です。それによって犬の排泄の成功体験数が変わり、トイレを覚えるまでの期間も違ってきます。

監視

まだトイレを覚えていない犬をフリーにさせる場合は、必ず目を離さないようにして、排泄のタイミングやトイレサインがあった時など、こまめにトイレに連れて行きましょう。トイレの場所で成功した時が覚えてもらうチャンスです。その場所でオシッコをしたら、褒め言葉と犬が確実に喜ぶ「ごほうび」を与え、良いことがあった印象を持ってもらいます。特に美味しい食べ物は、トイレを覚えてもらうのに効果的な「ごほうび」になります。

管理

目を離す時は、寝床であるクレートやケージに一旦入れておきましょう。犬は自分の寝床が汚れるのを嫌う習性があるため、それが犬の排泄を管理することになります。ただし、入れっぱなしは良くありません。もし長時間になる場合は、ベッドとトイレ両方設置できる広さのサークルがオススメです。目を離してる間、あちこちでオシッコをしていたなどのトイレの失敗をくり返していると、犬はますます飼い主がしてほしいトイレの場所を覚えにくくなります。排泄のタイミングやトイレのサインを監視できない時は、犬をフリーにせずトイレの失敗をさせない管理を徹底しましょう。

犬のトイレトレーニングには、
サークルを利用しよう

犬のトイレトレーニングには、体のサイズに合ったトイレシートのサイズ選びが重要です。体重2kg程度の超小型犬は、レギュラーサイズで問題ないのですが、2kg以上の小型犬はワイドサイズが良いでしょう。特にミニチュア・ダックスフンドのような胴が長い犬種も、ワイドサイズがオススメです。トイレシートの上でくるくる回って、排泄する位置を決める犬も多いので、回れるスペース分も考慮して選びましょう。柴犬より大きな犬は、スーパーワイドサイズのトイレが良いでしょう。初めから、トイレをサークルで囲んでおくと、オシッコがシートの外にはみ出しにくいので安心です。サークルは、犬がクルクル回っても余裕のある体の2~3倍の広さ以上のものを用意しましょう。

サークルの床に敷くトイレシートは、大きなサイズでなくても、レギュラーサイズを複数枚重ねて、サークル内に敷き、オシッコを吸収したシートだけを処分する効率的な使い方もできます。できれば、トイレの場所は飼い主さんが監視できるところに設置し、サークル近くの犬には届かない場所に、フードなどの「ごほうび」を準備しておくと、チャンスを逃さず、成功したときにすぐに褒めてごほうびが与えられるので便利です。

排泄のタイミングを知って
トイレに連れて行こう

朝目覚めたら、まずは犬をハウスから出して、サークルで囲んだトイレに入れて、排泄するまで待ちましょう。排泄ができたら、褒めてごほうびを与え、サークルから出してあげましょう。トイレで飼い主が見ている時に排泄すると、良いことがあったという良い印象を与えるのがポイントです。その良い経験を繰り返すことで、犬が自らその行動をとるようになってくれれば大成功です。下記の「犬の排泄しやすいタイミング」を参考に、タイミングを予測してトイレサークルに連れていきましょう。

犬の排泄しやすいタイミング

  • 寝起き
  • 水を飲んだあと
  • 遊びや散歩で体を動かしたあと
  • 興奮したあと
  • 食事のあと

犬の主なトイレのサイン

  • 床(地面)の匂いをくんくん嗅ぎはじめる
  • その場をくるくると回りはじめる
  • そわそわしはじめる(動きが速くなる、左右に往復する)

個体差はありますが、愛犬が排泄する前の行動をよく観察して、「これがうちの子のトイレサインかも?」と思うしぐさを見つけたら、迷わずトイレに連れて行ってください。

子犬と成犬の
トイレのしつけの違い

子犬と成犬のトイレのしつけの違い

子犬は、排泄間隔が短く、排泄回数も多いのが特徴です。それが成長するにつれて、排泄間隔が長くなり、成犬になると排泄数も少なくなります。排泄が頻繁な子犬は、寝床の近くにトイレを設置しますが、成犬になると寝床から離れた場所を排泄場所として好む習性があるので設置場所も考慮する必要がでてきます。また、未去勢の雄犬の場合は、単なる排泄行動ではなく「マーキング」という別の問題が出てくることもあります。ただし、子犬も成犬も、トイレでの成功体験を増やして、飼い主さんが褒めて教えていくというしつけの基本は同じだと考えてください。

子犬期のトイレのしつけ

子犬の時期は、短い間隔で排泄することが多いので、1時間おきぐらいにトイレに連れて行くのがおススメです。犬が排泄を我慢できる時間は、だいたい月齢+1時間といわれています。例えば、生後3カ月ならば4時間程度になります。ただし、それは安静にしている状態でのこと。活発に動いた場合は10~15分ほどで次の排泄をすることもあります。トイレをさせた後でも、「犬の主なトイレサイン」(上記掲載)が見られたら、こまめに連れていきましょう。子犬の頃にきちんと教えてあげることで、飼い主さんは犬のトイレの失敗に悩まされることも減り、犬も家の中を自由に過ごせるようになります。これから一緒に過ごす長い生活がお互いに快適になるので、迎えたら早めにトイレトレーニングに取り組むようにしましょう。さらに、ある程度トイレで排泄してくれるようになったら、トイレに連れていったあと「ワンツー・ワンツー」や「トイレ・トイレ」「シー・シー」など、排泄を促す言葉を決めて、声掛けをしましょう。このような声掛けの合図に促されて、排泄するクセをつけておくと、お出かけ先などの自宅以外でのトイレの時にも、合図で排泄を促すことができるでしょう。

成犬期のトイレのしつけ

成犬の場合は、すでにトイレをする習慣があり、今までどんなところで排泄していたかが重要です。毎日のお散歩で排泄する習慣がある犬は、屋内では我慢して排泄しない場合もあります。成犬期のトイレの問題は、慢性的なトイレの失敗や環境変化による失敗、体の成長によるものなど、さまざまな経緯や背景があります。それによりトイレのしつけのポイントも異なってきます。

長期間失敗が続いている

子犬の頃からずっとトイレの失敗が続いて、成犬になってもトイレを覚えないのは、犬をフリーにしている時間が長い小型犬に多くみられます。これは、監視と管理が徹底されていない可能性があり「粗相をしても少量だから」と飼い主さんが容認している場合もみられます。しつけを成功させるポイントは、飼い主さんが気持ちを切り替えて「しっかり教える」手間を惜しまないことです。

サークルから一度出すとトイレ時にもサークルに入らない

留守番時間が長く、寝床とトイレを設置したサークルに長時間入れられている犬によくみられます。ずっとサークルに閉じ込められていたので、飼い主さんが帰宅し、サークルから出すと、排泄したくなってもトイレのあるサークル内にはい入りません。それは、サークル時間が長すぎるため、犬のニーズが満たされていないことが原因です。まずは、サークルの外にもトイレシートをセットしたトイレトレーを設置し、そこでも排泄できるようにしてください。そして、お散歩や飼い主さんと遊ぶ時間をしっかりとって、犬の運動欲求や飼い主さんとのコミュニケーション欲求などのニーズを満たす努力をしましょう。

マーキングする

雄犬は、体が成長してくる生後6~8カ月ごろになると、片足を上げ、あちこちにオシッコをかける行動がみられます。これは、マーキングと呼ばれる犬がオシッコで匂いづけをして、自分の存在やテリトリーを主張する本能的な行動です。ホルモンの影響によるものなので、普段のオシッコとは別のものと考えてください。特に未去勢の雄犬は頻繁に行う傾向がみられますが、雌の場合も生後6カ月を過ぎる頃に発情期を迎え、それを雄犬に対してアピールするためにマーキングすることがあります。どちらも去勢や避妊手術をすることで緩和される報告もあります。繁殖の予定がなければ、さまざまな病気の予防にもなるので検討してみましょう。

環境の変化による失敗

成犬を新しく迎えた、引っ越しで生活環境が変わった、部屋の模様替えをしたなど、環境が変化すると今まで室内でトイレを成功していた犬も、失敗しやすくなります。新しい環境に慣れていないこともあり、不安から粗相する場合もあります。今まで使用していたトイレグッズを用い、できる限り以前の環境に似た場所にトイレを配置しましょう。そして、30分~1時間ごとにトイレのところまで連れて行き、声掛けをして排泄を促してください。排泄に成功したら、きちんと褒めてごほうびを出す成功体験を増やします。犬はこれでトイレの場所を思い出し、復活が速くなります。

トイレで排泄する経験がない場合

今まで寝床も排泄場所も同じ空間を強いられていた元繁殖犬などのレスキューされた犬を迎えた場合は、サークルなどで管理しようとしても、トイレを教えるのが難しいことがあります。そもそもトイレで排泄するという認識が犬にありません。排泄物が汚いという感覚や身体を汚したくないという、本来犬がもっている意識がないため、犬本来の感覚やサイクルを蘇らせるリセット期間が必要になります。トイレで排泄した経験がない犬を迎えた場合は、犬の行動の専門家のカウンセリングを受けるのが良いでしょう。

トイレの成功体験を
積み重ねてステップアップ!

トイレの成功体験を積み重ねてステップアップ!

犬がトイレでの排泄に成功する体験を増やしたいけれど、失敗する場合もあります。そんな時は、騒がず、叱らず、声掛けなどもせず、黙々と片付けてください。排泄する度に叱られると犬は、飼い主を怯え、隠れて排泄する可能性も出てきます。叱ることを続けると犬は、どんどん正しいトイレを覚えられなくなるので控えましょう。トレーニングが順調に進めば、常にトイレサークルの入口を開けておき、犬が自らトイレに入れるようにしておきます。犬が全く他の場所で排泄しなくなれば、トイレのファーストトレーニングは完了です。次は、サークルなしのトイレトレーにセットしたトイレシートに排泄することを教えていきましょう。

しつけがうまくいかない時の対処法

トイレトレーニングがうまくいかないと感じたら、まず状況をメモしておくことです。いつ、どこで、どんな粗相をして、飼い主さんはどう対処しているのかなどを書いて状況を「見える化」する愛犬の排泄記録をつけましょう。ちゃんとトイレのしつけをしているつもりでも、犬が100%トイレで排泄をするようになるまでは、まだしつけは完了していないと思ってください。ちょっとした管理と監視をするだけでも、改善する例はよくあります。特に多い下記にあるお悩みの対処法と、排泄記録の具体的な方法は『犬のトイレのしつけ お悩み別アドバイス』で紹介します。

特に多いお悩み

※『犬のトイレのしつけ お悩み別アドバイス』の各お悩みの内容に遷移します。

公開日 : 2020.02.27