Withコロナ時代のニューノーマルな
犬との暮らしTips集
新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により、人間社会では新しい生活様式を余儀なくされました。
人の暮らしの変化はもちろんペットにも大きく影響を及ぼしています。
Withコロナ時代を大切なペットとどのように暮らしていくべきか、
ニューノーマルへシフトする犬との暮らしのTipsを紹介します。
監修の先生入交 眞巳(いりまじり まみ)獣医師
米国獣医行動学専門医。学術博士。動物病院に数年間勤務した後、アメリカに留学。アメリカ・インディアナ州立パデュー大学で博士号取得。ジョージア州立大学獣医学部にて獣医行動学レジデント課程を修了。帰国後、北里大学動物行動学研究室専任講師、日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科講師を経て現職。どうぶつの総合病院 行動診療科 主任。
コロナ禍での自粛がもたらした
ペットへの影響
一緒にいられる時間が増えて嬉しい反面
毎日のルーティンが崩れて困った行動も…
#stayhome期間、お留守番の多かったわんちゃんにとって、家族と一緒に過ごせる時間が増え、お散歩もいつも以上に長く行けるようになり、嬉しい期間になったのではないでしょうか。また、外出自粛中に動物病院が忙しくなったという報告があり、「ずっと一緒にいるので愛犬のちょっとした異変に気づきやすくなった」「リモートワークなので休日まで待たなくても病院へ連れて行きやすくなった」など、今まで以上にペットのことをよく見るようになった声も多いようです。
一方で、お子さんを含む家族全員が家の中にいて、常にわさわさしているので「前より吠えやすくなった」、オンラインショッピングやデリバリー注文の頻度が上がり「配達員に向かってよく騒ぐようになった」という声も少なくありません。以前までは1日1回は出かける家族がなぜかずっと家にいる。今まで学習した1日のルーティンが崩れ、ストーカーのように後を追ったり、戸惑いと不安からやっと治った分離不安が再発したというわんちゃんも増えています。
コロナ禍の外出自粛要請中にペットブーム到来
家にいられる時間が長くなったせいか、ペットを迎えたい需要が高まり、ペットショップでの販売数増加や動物保護団体への譲渡申し込みが多くありました。ペットショップやブリーダーから迎えた場合の多くは幼齢です。幼齢の場合、在宅だからといって、仕事がない日はゆっくり起きて仕事のある日は早く起きるような、朝の食事の時間がまちまちだと低血糖を起こす場合もあるので規則正しくご飯を与えることが大切です。#stayhome期間中ずっと一緒にいたのに、明日から出勤で急に8時間お留守番と始まってしまっては、子犬にとってそれは非常に不安で酷な時間です。今後出かけていく生活へシフトする可能性を考えサークルやケージの環境を整備しハウスの練習を始めておきましょう。
「しつけ」に関連する記事はこちら
https://pet.unicharm.co.jp/web-magazine/tag/discipline/dog/
犬にもソーシャルディスタンスは必要?
犬から他の個体に感染した報告はない(2020年8月現在)
香港で新型コロナウイルスに感染者の犬にCOVID-19の原因となっているSARS-CoV-2の弱陽性反応が認められた報告が1件、国内でも新型コロナウイルスに感染した飼い主から預かった犬2匹がPCR検査の結果、陽性反応が出た報告がありました。公益社団法人日本獣医師会では現時点で犬から他の動物へ伝播するという根拠はまだないとした上で、飼い主自身のしっかりした感染防御の対応が最も重要としています。また、飼い主が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性と診断された場合は、ペットは濃厚接触者となり予防設置としてペットとの接触を避けなければなりません。もしもの備えとして飼い主自身が入院しなければならない場合の預け先を事前に検討しておくべきでしょう。
Withコロナ時代のニューノーマルな暮らしのTips集
これからのWithコロナ時代、人の新しい生活様式はペットの生活にも必ず影響を与えることになります。リモートワークとオフィスワークどちらにでもシフトしやすいルールづくりがポイントになってきます。1日のルーティンをオフィスワークと同じような生活リズムでルール決めをすると、出勤が始まっても犬が生活の変化に慣れやすいです。ここでは日々のルーティンの中にぜひ取り入れたい犬とのニューノーマルな暮らしのTipsをご紹介します。
下準備:Tipsを活かすおすすめのフードの与え方
わんちゃんとの遊びやトレーニングでは、ご褒美としてよくフードを使います。
おやつでもよいのですが、いつもの食事以外におやつを使うとカロリーオーバーで太ってしまうこともあるので、1日の与えるカロリーを守り、1日分の総合栄養食の中から使うようにしましょう。おすすめの与え方は、1日に与えるカロリーを100%としてフード50%を朝と夜のごはんとして与え、残りの50%を保存容器に入れておきご褒美として使います。たまに、いつものフード以外の美味しいおやつを準備しておくのもポイント。おやつは人が多いときや難しいことに挑戦する「ここぞ」という時に使えます。
Tips:犬のお散歩時
犬のお散歩のエチケット
お散歩は犬にとって、運動だけじゃなくいろいろなニオイを嗅いで刺激を受ける重要な時間です。お散歩の時間がないと落ち着かなくなってくるわんちゃんは多いでしょう。お散歩自体はエチケットを守れば危険をたくさん払うものではありません。エチケットを守って連れて行きましょう。
- 飼い主のマスクの着用
- 人混みの多い時間帯や場所は避ける
- 犬連れの人と挨拶するときは距離に注意する
- 室内に入れる前に犬の全身をボディタオルで拭く
- 帰宅後は手洗いとうがいをする(飼い主)
お散歩中のアイコンタクト
もし逆にエチケットの悪い方がむやみに犬に近づいて来たら「うちの子は怖がりなので」などといって断るようにしましょう。こういったシチュエーションの時に止まらず立ち去れるといいので、日頃から名前を呼んだら飼い主さんの方へ振り向けるように練習しておくと色々なところで役立ちます。この練習はお散歩中のコミュニケーションの一環としても◎です。
方法
- ①鼻先でフードの匂いを嗅がせて、その持っている手を自分の顔の近くに持ってく
- ②犬がフードを目で追って飼い主さんの顔を見る
- ③名前を呼んで「いい子だね」と褒めてフード1粒をご褒美
- ④名前を呼んで顔を見るようになったら、外でも同じことをやってみる
- ⑤外に出たら、まずは1歩歩いては、おやつをあげる、1歩歩いてはおやつをあげる、を繰り返す
- ⑥飼い主さんの方を見て歩いてくれるようになったら、「名前」を呼び、見てくれたらご褒美をあげます。
- ⑦「⑥」を何回か繰り返した後、数歩歩いては名前を呼んでご褒美をあげるようにしましょう。
わんちゃん自身が「名前を呼ばれたらいいことがあった」と思えるようになれば、歩きながらでも振り返ってくれるはず。何回か繰り返し安定して振り返るようになったら、いきなりゼロではなくランダムにフードを抜いていきましょう。いきなりゼロにしてしまうと「ごほうびもらえないならやらないよ」となってしまう可能性があるので注意。しつけだからと怖い顔ではなく、厳しい口調でもなく、飼い主さんも楽しみながら行うのがポイントです。
Tips:遊んでコミュニケーションを深める
複数の空き箱を使った宝探しゲーム(ノーズワーク)
#stayhomeで頻度の増えた通販やお菓子の空箱を活用し、子犬から体力が衰えて来た老犬でも楽しめる嗅覚を使ったゲーム。箱の中にフードを入れてわんちゃんにニオイをたどって見つけてもらうゲームです。まずはひとつの箱から試してみて、徐々に箱を増やしていきます。このゲームは人が犬に教えるゲームではなく、元々優れた嗅覚を持っている犬自身が主体となり人とコミュニケーションを取りながら見つけるゲームです。もしも入っていない箱を選んでも叱らず・誘導せず最後まで見守りましょう。脳を活性化するだけでなく、嗅覚を鍛え、見つけた後のわんちゃんの自信のついた顔を見られるのが醍醐味です。それでは、箱の中にフードを一粒入れて、フードを食べてもらうところからスタートしましょう。
遊び方
- ①犬の見ている前でフードを箱に入れて、箱から食べさせる。
- ②犬が見える少し離れたところで、箱の中にフードを一粒入れて、フタは開けたまま「探して」の合図で箱の元まで来させて食べさせる。
- ③犬が見ていないところでフードを箱に入れて床に置く。「探して」の合図で犬が箱の元に来て食べるまで待つ。
- ④フードを入れた箱を他の箱と一緒に設置。フードのニオイをたどり、フードの入った箱を見つけて食べられるまで待つ。
徐々に、箱の数を増やしたり、床より少し高いところに設置したり、箱のフタを少し閉じたり、レベルアップしていきましょう。ノーズワークにはおやつを使って自宅でできるものから、アロマを使用した本格的な競技形式のものまでさまざまあります。当記事では自宅で簡単にできる方法をご紹介しますが、もっといろいろ知りたい方はインターネットで「ノーズワークとは」で検索していただくと、犬への教え方、やり方を説明してくれているサイトも多数ありますので試してみるとよいでしょう。
空き箱ひとつを使った知育玩具
空箱にいろいろ穴を開けて、犬自身でフードを中から取り出す遊びです破壊型、頭脳型、取り方にいろいろ個性が現れるのも魅力。簡単な形から徐々にレベルアップしていきましょう。
遊び方
- ①お菓子の箱の蓋や横にカッターで穴を開けます。
- ②中にフードを入れ、蓋をします。
- ③「見つけて」でスタート。
<箱の片付けが面倒な方向け>簡単ノーズワークマットの作り方
そうはいっても箱の片付けが面倒という方に、スペースを取らないノーズワークマットもおすすめ。宝探しゲームと同じく犬の嗅覚を使い、本能的意欲を満たし自信がつく効果があります。リモート会議中や家事の間など少し目を離しておきたい時などに活用できます。
準備するもの
- シンクマット(フェルトを通すための穴が開いたマットならなんでも可) 1枚
- フェルト 4枚
作り方
- ①フェルトを横幅4cmほどに長細くカット。
- ②シンクマットの穴にカットしたフェルトを結びつける。
- ③完成
遊び方
フェルトの影にフードを複数隠すだけ。全てフードがなくなってしまったら、食いちぎる可能性があるのでそのままにせず引き上げるか、フードを継ぎ足して第二弾。
ひとり遊び用の道具を多めに揃えておく
犬も猫も人間の2、3歳児と同じぐらいの知能があります。飼い主さんがリモートワークでお仕事をしていれば、気になって邪魔をしてくることは当然のこと。何もすることがなくただ待っているのは、犬にとってとても退屈です。オンライン会議中など役立つので、日頃から一人遊び用の道具を多めに用意しておきましょう。
選ぶポイント
- 簡単には壊れない丈夫な素材
- フードを隠せる構造
- 誤って飲み込めない大きさと形状
Tips:一発芸で
コミュニケーションを深める
愛犬と息ぴったりの芸ができたら嬉しいですよね。一緒に取り組めばますます信頼関係も深まります。
たくさん褒めることを忘れずに、挑戦してみてください。
ハイタッチ ※「お手」ができるわんちゃんは【STEP4】【STEP5】あたりからスタート。
- STEP 1
- フード一粒を握ったグーの手をわんちゃんの前足のつけ根の正面あたりに差し出し、グーの手をこじ開けようとわんちゃんが前足をグーの手にかけたら、すぐに「いい子だね」と褒めて、握っていた手を開きフードのご褒美を与えます。
- STEP 2
- 親指のつけ根でフード一粒を落ちないうように抑え、手のひらを空に向けてパーの形に開き、STEP1と同じ位置に差し出します。わんちゃんが前足をかけたらすぐに褒めて手のひらのご褒美を与えます。
- STEP 3
- STEP2が連続でできるようになったら、今度は手のひらをわんちゃんの方に向けて、わんちゃんが前足をかけたら、すぐに褒めて今度は逆の手でフードのご褒美を与えます。
- STEP 4
- STEP3が連続してできるようになったらもう少しです。次は「ハイタッチ」と言葉をつけてから、手のひらを差し出します。わんちゃんが前足をかけたら褒めて反対の手からご褒美です。
- STEP 5
- 安定してできるようになったら、手のひらの位置を少し高くしていき、わんちゃんの前足が届く範囲でよりハイタッチに見えるように調整します。
真剣白刃取り
- STEP 1
- わんちゃんをお座りさせます。
- STEP 2
- 親指と人差し指でフード一粒を掴み、その他の指3本をピンと立て、肘を90度に曲げます。
- STEP 3
- フードを持った手を、わんちゃんの頭上あたりにゆっくり振り下ろします。わんちゃんがフードが気になって下ろした手に両前足をかけたら、すぐに「いい子だね」と褒めて、親指と人差し指で持っていたフードをご褒美として与えます。
- STEP 4
- STEP3が連続してできるようになったら、フードを持たずに5本指を立ててゆっくり振り下ろし、わんちゃんが両前足をかけられたら、振り下ろした反対の手からご褒美を与えます。
- STEP 5
- STEP4が連続してできるようになったらもう少しです。「真剣白刃取り」と言葉をつけてからゆっくり振り下ろし、できたら反対の手からご褒美です。
Tips:出勤しているときの生活リズムで
1日のルーティンをつくる
仕事の時間はハウスで休んでもらうルールをつくる
仕事中など邪魔して欲しくない時は「ここで待っててね」とハウスに入ってもらい、その後は触れない・構わないルールをつくります。幼齢の子や分離不安の傾向があるわんちゃんには、特にルールを徹底しルーティン化していくといいです。最初は吠えることもあるかもしれませんが、繰り返すことでルーティンが定まっていきます。もし入れたり入れなかったりとムラがあるとわんちゃんの混乱を招き、どうしたら出してくれるのかつい吠えてみたりするものです。そのときに声がうるさいからと出してしまうと、吠えるループに陥ってしまうことがあるので気をつけましょう。
反対に、シニア犬やある程度おうちの中でお気に入りの場所を見つけて休めるわんちゃんの場合は、そのままお休みの邪魔をしないようにしてください。お子様のいるご家庭で、寝ているところをお子さんが急に触って咬みつかれたという話は珍しくありません。
お互いに邪魔をしないルールをつくりましょう。
「ハウス」の練習はしっかり遊んだ後のクールダウン時間を利用
ハウスが苦手なわんちゃんの場合、ハウスへ入れる前にお散歩や遊ぶ時間を設けてから入ってもらうのが◎
何もない状態からのハウスより、体や脳を使ったあとにハウスで休んでもらう方が慣れやすくもあります。少し長めに待ってもらう時はケージの中にひとり遊び用おもちゃを入れるなどで応用も。
入交先生からのメッセージ
ニューノーマルな暮らしの中でペットとの新しい発見を楽しんで
新型コロナウイルスにより不安な日々が続いていますが、#stayhome期間中であっても犬のお散歩にいくことで気分展開になったり、一緒に住んでいる動物がいるだけで会話が生まれるきっかけが増えたり、抱っこしたり触ることで安心や癒しを与えてもらっていたのではないでしょうか。改めて、私たちは伴侶動物から多くのことを救われている実感をした期間になったと思います。
新しい生活様式が始まりつつある中、動物がいる生活は大変なこともありますが、人側だけの都合を押し付けるのではなく、ペットの都合も尊重した暮らしのルール決めをし、ペットとの信頼関係を育くんでほしいです。
動物は観察のプロ。伴侶動物はよく家族のことを観察しています。
以前までひとりでお留守番をしていて大人しくしているしかなかったわんちゃんでも、関わり合いの時間が増えれば、飼い主さんの無意識のリアクションを逃さず見ていて、新たな一面が引き出されることもあります。ペットと向き合う時間が増えたからこそ、一緒に取り組めるTipsを毎日に組み込み、生き生きした一面を引き出してあげたいものです。ニューノーマルな暮らしの中で、ぜひ新しい発見を楽しんでみてください。