⼤切なペットと⼀緒に。
もしも災害が起きたらどうする?
東日本大震災、西日本豪雨(平成30年7月豪雨)、北海道胆振東部地震、能登半島地震など、数々の災害が起こりました。
災害はいつどこで発生するかわかりません。前回、「大切なペットと一緒に。ペットの防災対策」に続き、
第2弾となる今回は災害時にスムーズなペット同行避難を行うために心掛けたいことを紹介します。
さらなる防災力を身に着けるために、ぜひともチェックしておきましょう。
お話を伺った方平井潤子さん
(NPO法人アナイス)
公益社団法人東京都獣医師会事務局長
人と動物の防災を考える市民ネットワークNPO 法人アナイス代表
災害時に動物と共に避難するための情報提供などのサポート活動を行っています。
http://www.animal-navi.com/
ライター:白石梨沙
これまでの主な災害
この30年間で、国内でさまざまな災害が発生しました。1990年~2000年には雲仙普賢岳噴火(1991年)、阪神淡路大震災(1995年)、有珠山噴火(2000年)、三宅島噴火(2000年)が発生。ペットが取り残されるなど、当時から動物に関するさまざまな問題が起こっていました。新潟中越地震(2004年)では、5,000頭以上の動物が被災し、ペットを連れて車中避難する飼い主さんの姿も見られました。東日本大震災(2011年)では津波で多くのペットが犠牲となりました。ペットを助けようとして津波の犠牲となってしまった飼い主さんや、避難所でのペット関連のトラブルが大きなニュースとなりました。また、福島県の立ち入り制限区域に残されたペットたちが繁殖して増えたことで、地域の公衆衛生や安全面で深刻な問題も出てきました。東日本大震災以降、ペット同行避難の意識が高まりましたが、熊本地震(2016年)ではペットの受け入れが十分でない避難先もあり、ペット可の避難所や仮設住宅の確保が今後の大きな課題となっています。
被災で実際にあった
ペットの困りごと
被災で実際にあったペットに関わる困りごとについて教えてください。
災害時は本当にさまざまな問題が起こります。飼育道具を何も持たず、犬を抱えて避難してきた飼い主さんは、犬を係留できずに困っていました。避難所で猫をキャリーバッグに入れたまま、何日も生活することができずに困っていた飼い主さんもいました。アレルギー対応食や療法食が手に入らない問題も起こりました。災害時は何が起こるかわからないので、日頃から飼い主さんが防災意識を高め、きちんと準備しておくことが大切です。飼い主がペットのために確保する必要があるのは、主に水、食べ物、居場所の3つです。水やフード、薬など、ペットの命に関わるものはローリングストック方式※で十分に備蓄をしておきましょう。災害時にとっさに持ち出せなくても一度避難した後に取りに戻れる可能性を考えて、保管場所を工夫しておくとよいでしょう。
- ※ローリングストック方式など詳しくは「大切なペットと一緒に。ペットの防災対策」にて紹介しています。
また、避難所や仮設住宅がペット不可だったり、しばらくの間、ペットの飼育環境が屋外が続くという可能性もあります。親戚や知人の家など、避難後に安心してペットを預かってもらえる場所をいくつか探しておくことも大切です。最近はSNSが普及しているため、ペット仲間のコミュニティに入るなどして、災害時に協力し合えるネットワークを作っておくのもおすすめです。また、犬を飼っている人であれば、近所の散歩仲間とペット同行避難について事前に話し合っておくとよいでしょう。日頃から、これはだめだったらこれと、臨機応変に動けるためにたくさんの引き出しを用意してほしいです。
ハザードマップの活用の仕方
ハザードマップを使ってどのような避難シミュレーションを行ったらいいでしょうか?
災害時により安全な場所に避難するためには、自分の住んでいるエリアのハザードマップを確認しておくことが大切です。自分の家の近くだけでなく、家族の勤務先や学校など、生活に関わるすべての場所の被害想定を事前にチェックしておきましょう。ハザードマップでは、揺れやすい場所、建物被害が起こりやすい場所、火災が発生しやすい場所、津波や洪水の浸水想定区、地すべりや雪崩の危険箇所、避難所の場所などを調べることができます。
ハザードマップは国土交通省や各自治体のサイトで公開しています。災害発生時にハザードマップを見ようと思っても、インターネットが繋がらない可能性があります。
自分や家族の生活に関わるエリアの避難想定をチェックしたうえで、災害時にどう動いたらよいか、日頃から避難経路をシミュレーションしておきましょう。
- ※国土交通省ハザードマップポータルサイトより 東京都港区周辺の災害種別すべて(洪水・土砂災害・津波・道路防災情報)を表示した場合
災害時のアクションカードを作ろう
もしもの災害発生時にむけて心掛けておきたいことを教えてください。
災害発生時にパニックになって、自分の家の電話番号さえも言えなくなってしまう人がいました。平時と違って、災害が起こったときに頭が真っ白になって、何をしたらよいかわからなくなることが多いです。そのため、災害時にやるべきことを書いたアクションカードを作っておくと便利です。
アクションカードには自分や家族の名前、住所、電話番号、携帯電話番号、日中連絡先(会社や学校)、災害発生時の待ち合わせ場所や時間、重要な連絡先などを記入しておきます。ペットの情報(名前、種類、生年月日、予防接種やワクチン接種日、アレルギーの有無、薬名、マイクロチップ登録番号など)もカードに記入しておくのがおすすめ。服薬している薬や療法食があれば、名前や容量がわかるようにスマホで撮影してデータを保存しておくと便利です。日頃からアクションカードを家族全員で持ち歩く習慣を身につけましょう。
また、災害発生時は災害伝言ダイヤル(171)を活用して、正しい情報を集めましょう。安否確認が必要な家族や親族などでLINEグループを作っておくのもおすすめです。
災害時のアクションカードの作成例
災害時の行動
- ①まずは自分の命を守る行動をとる
- ②近くにいる人に声をかけて、周囲の安全を確認
- ③二次被害を避けられる安全な場所を確保して移動する
- ④ペットの所在と安否を確認し、リード着用もしくはキャリーバッグに入れて同行避難する
- ⑤自宅が安全かどうか確かめ、どのように避難するか決める
外出時の場合
- ①外出時は周囲の状況に注意しながら、近くの安全な避難場所に避難する
自宅の場合
- ①水道・ガス元栓を閉め、電気ブレーカーを落として、戸締りをして避難
- ②貴重品と非常持ち出し袋を持ち、ペットを連れて行く
- ③いったん避難して、自宅の安全が確認されたら、備蓄品を取りに戻る
待ち合わせ
指定避難場所①△△△△の□□□□にて(00時 ~00時)
避難場所②△△△△の□□□□にて(00時 ~00時)
正しい情報を集める
災害時伝言ダイヤル:171
LINEグループ
災害が発生したら、まずは自分の身の安全を確保したうえで、ペット同行避難を心掛けましょう。そのためには、日頃から速やかに避難できるように入念に準備をしておくことが大切。熊本や北海道の地震は夜に発生したため、辺りが真っ暗で避難するのに苦労した人が続出しました。夜に災害が発生しても速やかに避難できるように、停電時に自動点灯するコンセントを取り入れるのもおすすめです。
また、飼い主さんが外出中で自宅にいなかったとしても、ペットが生き残れるように飼育環境を見直しておくことも必要です。家の中でも外出先でも、今もしも災害が起こったらどうするか。日頃から被害想定や避難経路をシミュレーションして、防災意識を高めておきましょう。