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犬の肥満予防と対策

生活習慣病予備軍の代表選手は、人も犬も「肥満」です。ぽっちゃりとしたワンちゃんの姿が好きな飼い主さんもいるでしょうが、カラダには負担がかかっています。そんな肥満の対策となる毎日の生活での見直しポイントとは?

お話を伺った先生村田 香織 獣医師
(もみの木動物病院)

兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。
著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。

INDEX

生活習慣病の予備軍となる肥満とは

肥満の原因は何が考えられるのでしょうか?

肥満の原因は、食べ過ぎだと思われがちですが、実はそれだけではありません。根底には犬の「退屈な生活」があります。ペットとして飼育されているワンちゃんたちは、精神的にも肉体的にも刺激のない生活を送っていることが多くなっています。そのストレスのないことがストレスになるような「退屈な生活」が続くと、刺激不足によって「食べることしか楽しみのない生活」に陥ってしまいます。ずっと室内にいてあまり運動しない状態で、食べることだけが生きがいになると、当然太りやすくなります。そんな犬の肥満は、少し太り始めた時に飼い主さんが気づき、生活習慣を改善することで予防できます。そのためには、定期的に愛犬のボディチェックを行い、太っていないか確かめることが大切です。

家庭でできるボディチェックで今の愛犬の肥満度を知ろう

家庭でできる肥満度チェックの方法はありますか?

チェック方法としては、ワンちゃんを立たせて、両手で肋骨のある脇腹を優しく触ってみましょう。その時に、肋骨の凹凸の感触がすぐにわかれば、問題ないと思います。その凹凸は人間の手の甲を触ったときの手の骨の感触を参考にしてください。しかし、脂肪に覆われて探さなければ肋骨の凹凸がわからないようでは太っていると思ってください。下記のボディコンデションスコア(BCS)を参考に、愛犬の体型が肥満ややや肥満になっていないかチェックしてみましょう。

ボディコンデションスコア(BCS)
出典:環境省自然環境局総務課動物愛護管理室(2009)「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」

BCS1 痩せ
体に脂肪がなく、肋骨や背骨、骨盤がゴツコツとしている。ウエストが深くくびれてかなり細い。
BCS2 やや痩せ
薄い脂肪があるが、肋骨の凸凹の感触がすぐにわかる。ウエストがくびれている。
BCS3 理想的
過剰な脂肪がなく、肋骨を触ると骨の感触がわかる。ウエストもややくびれている。
BCS4 やや肥満
脂肪は多いが、肋骨の感触はある。ウエストくびれはないが、胸よりお腹はやや上がっている。
BCS5 肥満
厚い脂肪があり、肋骨の凹凸がわからない。脂肪で背中が平らに見え、お腹は下がっている。

ボディコンデションスコアで、肥満や、やや肥満だった場合は、ダイエットが必要です。ダイエットには運動が不可欠ですが、すでに肥満になっている場合は、ある程度体重を減らしてから運動をさせないと、カラダへの負担がかかり過ぎ、別の問題が出てくるので注意してください。
一日に必要な適正カロリーは、ライフステージに合った総合栄養食のパッケージの記載内容を参考に与え過ぎていないか確認してみましょう。忘れてはいけないのがおやつの分量です。与えるおやつは、必要カロリーの10%以下にして、その分を食事から減らすようにしましょう。また、同じ量のフードを与えても、運動量や基礎代謝の個体差によって、体重は増減します。必要カロリー量で太る場合は、少しずつフードの量を減らして様子をみてください。また、すでに肥満になっている場合は、かかりつけの動物病院に相談して、与えるフードの種類や量を見直し、無理のないスケジュールで減量しましょう。

すぐに始めたい愛犬の肥満対策

犬の肥満対策として飼い主ができることは何かありますか?

まずは、食卓から人の食べ物を与える習慣がある方は気をつけてください。この習慣があると、ワンちゃんはおねだりをするようになります。そこでつい与えてしまうと太らせる原因になるので、与えないことを徹底してください。ドッグフードを与える場合も、器に入れて置くだけでは、早食いしてしまうため、ワンちゃんが時間をかけて食べられるように工夫しましょう。
例えば、知育玩具の中に入れて、遊びながら食べられる工夫をする、トリックをしたご褒美として少しずつ手から与える方法もいいでしょう。さらに運動をさせることも考えるなら、ドッグフードをお部屋の中で投げて取りに行かせ、次は違う方向に投げるという与え方もあります。この方法は一食分を食べるのに時間がかかり、投げたフードを取りに行くためにワンちゃんが運動することになるので一石二鳥です。

肥満予防には、肉体的にも
精神的にも刺激が必要

犬の肥満予防になる生活のポイントは?

食べることしか楽しみがなくなってしまったワンちゃんの「退屈な生活」を打破し、肥満を予防するためには、肉体的にも精神的にも「刺激」を与えることが大切です。まず、行ってほしいのは、ワンちゃんを外に連れ出すということです。お散歩はもちろん、知らない場所へのお出かけも刺激になります。そして、飼い主さんやほかの人たちと触れ合う刺激も大切です。おもちゃで遊んであげることや、いっしょにゲームをするなど、スキンシップやコミュニケーションになるようなことを毎日行いましょう。
さらに、犬同士の刺激も大切です。挨拶をさせたり、遊ばせたりする犬同士の交流を楽しみにしているワンちゃんたちも多くいます。もちろん、相性が悪い犬同士を無理やり近づける必要はありませんが、仲良しのワンちゃんが増えると生活の楽しみもアップします。このような愛犬の楽しみとなる刺激が多い生活は、肥満の予防になるでしょう。