日々のケアで予防しながら
生活習慣病の予兆をチェック
自宅でのんびりした気持ちで、自分のそばに寄り添う愛犬とのスキンシップは、飼い主さんにとって至福のひととき。そんなハッピータイムに行う日々のケアが、愛犬の健康を守り、病気の早期発見にもつながります。
そのケアの方法とは?
お話を伺った先生村田 香織
獣医師
(もみの木動物病院)
兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。
著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。
家庭でのケアで防げる生活習慣病
飼い主のケアで防げる病気もあるのでしょうか?
ワンちゃんに対して家庭でできるケアには、シャンプーやブラッシングなどのボディケア、デンタルケア、耳のケア、目の周りのケア、爪切り、肛門腺絞りなどがあります。動物病院やトリミングサロンで、定期的に行えるケアもありますが、できれば日頃から家庭でも行っていただきたいのは、ブラッシングなどのボティケアと歯磨きをするデンタルケアです。ケアを怠ると、皮膚炎や歯周病などの病気を引き起こす可能性があるので注意してください。
さらにボディケアでは、ブラッシングだけではなく、爪先やパッド、尻尾や肛門付近、目や耳などに垢や汚れがついていないかもチェックしましょう。不衛生な状態は、炎症を起こしやすくなるのでキレイに。清潔に保つことが生活習慣病の予防につながります。
毎日続けたいブラッシングと
ボディチェック
ブラッシングとボディチェックを上手にするコツはあるのでしょうか?
ブラッシングは、ホコリや抜け毛を除去し、毛玉を防ぐため、皮膚や被毛を清潔に保て、皮膚疾患の予防になります。皮膚の新陳代謝の促進や、ノミやダニなどの外部寄生虫の発見の機会にもなります。さらに、心地いいブラッシングタイムは、飼い主さんとの大切なスキンシップの時間になります。毎日のブラッシングでは、下記の部分に注意してボディチェックをしましょう。
- ①被毛の状態
- ②皮膚の赤みやブツブツ、しこり
- ③目ヤニや目の赤み
- ④耳の匂いや耳垢
- ⑤鼻水や鼻汁
- ⑥クチの匂いや歯茎や舌の色
変化があれば、トラブルや病気の予兆かもしれません。
しかし、子犬のころから慣れさせていないとブラッシングはもちろん、ボディチェックも嫌がるワンちゃんはいます。無理に触ると拒否反応を示したり、唸ったり攻撃行動に出る場合もあるので注意が必要です。その場合は、飼い主さんの手から、フードを与える練習からはじめてください。そのとき、愛犬が嫌がることは決してしないように。
飼い主さんの手からスムーズにフードを食べるようになったら、「ハンドコルネ」でボディチェックやブラッシングする方法があります。
- ①手をコルネパンのカタチにして、中にフードを入れて「ハンドコルネ」を作ります。ワンちゃんが自分から鼻先を飼い主さんの手の中に入れて食べるよう促しましょう。
- ②ワンちゃんがハンドコルネの中のフードを夢中で食べている間に、もう一方の手で少しカラダを触ります。
- ③気にせず食べているようなら、徐々にカラダを触る時間を増やしていきます。
もし、食べるのをやめて不機嫌になるようなら、触られるのがかなり苦手。ワンちゃんの目の色が変わるほどのスペシャルおやつ、例えばゆでたササミなどを用意して、少しでも触られることを我慢していたら、その報酬として与えてください。「嫌なことを我慢すれば、すごくいいことがある」と学習すれば、徐々に触らせてくれるようになるでしょう。
デンタルケアで歯周病をきちんと予防
愛犬のデンタルケアも重要なのでしょうか??
歯周病は、犬に多い生活習慣病の代表格で、3歳以上のワンちゃんのなんと80%が歯周病をもっています。歯周病は、歯茎の腫れや口臭、歯根膿瘍などを引き起こし、さらに歯周病菌が血管を通って全身に広がると、心臓や腎臓・肝臓などの内臓疾患を発症することもある恐ろしい病気です。
これらを予防するのは歯磨きです。しかし、いきなり歯ブラシを使って歯磨きをするのではなく、ゆっくりと慣れさせて、歯磨き嫌いにならないようにするのがポイントです。まずは、報酬となる食べ物を与えながら、口を触られることがうれしくなることからはじめましょう。ボディケアと共にデンタルケアも飼い主さんと愛犬の楽しい日課になることが理想です。犬は人間と違い虫歯にはなりにくいので、歯磨きの時に食べ物を与えても歯磨き効果は失われません。
定期健康診断とセルフチェックで
早期発見
セルフチェックで気になることがある場合は、動物病院へ行くべきでしょうか?
毎日のセルフチェックで気になるところがれば、動物病院へ連れて行きましょう。気になる症状がなくても、最低一年に1回、シニアになれば年に2回程度の定期健康診断をオススメします。ワンちゃんは我慢強い動物で、症状が表れた時には、かなり進行していることがあります。身体検査をはじめ、血液検査やレントゲン検査、エコー、心電図など、かかりつけの動物病院で実施している「健康診断メニュー」があると思うので、獣医師と相談して決めるのが良いでしょう。
日頃からよく観察をし、普段見せない行動が見られたら、それも獣医師に伝えましょう。例えば、カラダを掻いていた、舐めていた、ワンちゃんが気にするようなそぶりをしていたなども早期発見のヒントになります。病気の早期発見には、一緒に暮らしている飼い主さんの観察力が何より大事です。