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保護猫の迎え方と向き合い方

猫と暮らしたいと思った時に、あなたはどこから迎えますか?
平成29年度の猫の殺処分頭数は34,854頭、そのうち21,611頭は子猫です。
動物愛護センターや動物愛護団体には多くの保護猫たちが飼い主を待っています。里親としての迎え方から
向き合い方までをNPO法人ランコントレ・ミグノン代表の友森玲子さんにアドバイスいただきました。

お話を伺った方友森 玲子さん
(NPO法人ランコントレ・ミグノン)

動物保護、譲渡活動をするNPO法人ランコントレ・ミグノンの代表。2007年から東京都動物愛護相談センターから、犬や猫を始めうさぎなどの引き取り、受け入れを開始する。2011年、東日本大震災で保護された犬のために、千葉県東金市に犬のシェルターを開設。その後、中野区に猫シェルターを開設。2014年に、ペットサロン、クリニックを合わせた新しい形の一体型の保護活動施設を北参道に誕生させる。株式会社ミグノンプラン代表。今までで、およそ2,000頭の動物たちを受け入れ、ケアしている。

https://rencontrer-mignon.org/
http://mignonplan.com/

ライター:山ノ上ゆき子

INDEX

猫との出会いのための
アクションを起こそう!

一般社団法人ペットフード協会が平成30年に実施した「全国犬猫飼育実態調査」では、猫は、今や犬を上回り飼育数約965万頭の日本で最も飼われているペットです。猫ブームと言われていますが、ペットショップやブリーダーなどからの購入は全体の約22%。入手経路で最も多いのが「野良猫を拾った、迷い込んで来た」が38%、「知り合いから飼育を頼まれた、もらった」が約27%。つまり、自分が飼いたいと思ったタイミングではなく、たまたま縁があって飼っている人が多いのが現状です。それでは猫と暮らしたいと思った時は、どこで出会いをみつけたら良いのでしょうか?

猫の入手先 ※対象:現在猫飼育者、外猫(野良猫・地域猫)は除く 野良猫を拾った 38.0%、友人・知人からもらった 26.8%、ペットショップで購入 14.8%、里親探しのマッチングサイトからの譲渡 9.2%、飼育している猫が生んだ 4.4%、友人・知人のブリーダーから直接購入 3.6%、業者のブリーダーから直接購入 3.1%、シェルターからの譲渡 2.4%、インターネットを通じて直接購入 0.8%、その他 6.9% 出典:一般社団法人ペットフード協会「平成30年 全国犬猫飼育実態調査」統計データより

おすすめは動物愛護センターや動物愛護団体で、保護されている猫たちです。まずは、自分が住む地域の動物愛護センターや動物愛護団体のサイトをチェックしてみましょう。そこには、飼い主を募集している譲渡候補の猫たちの情報が写真入りで掲載されています。そこでどんな猫たちがいるのか「調べる」アクションを始め、実際に保護猫と会える譲渡会などの情報もあわせてチェックしておくと便利です。出会い方と検索サイトは、「保護犬・保護猫との出会い方」の記事で紹介しています。

譲渡会はお見合いと一緒、
マナーを守って確かめよう

自分が住む地域の保護猫情報を見つけたら、次は譲渡会に足を運んでみましょう。譲渡会に参加する時は、猫にストレスをかけないようマナーを守りましょう。

気をつけたいマナー

  • 顔を近づけてジッと見る
  • 大きな音を立てる
  • ケージをゆする
  • 勝手に触る
  • 持参したおもちゃやそれに代わるもので遊ぶ
  • 食べ物を与える

このような行動はトラブルの原因になるのでやめましょう。触らせてもらう時や遊ばせたい時は、スタッフに許可を得てからにしてくださいね。
猫の譲渡会では、猫の飼育環境を確認するのがポイントです。猫には目に見えない感染症やストレスで発症する病気もあります。そんな病気を予防する意味でも一頭ずつのテリトリーが確保されているところだと安心です。本来猫は単独行動する動物です。親子や兄弟の猫と違い、知らない猫同士で同じケージに入れられていると、トラブルの原因になることがあります。管理状態によっては健康状態が悪くなる場合があるので、耳や目の周りの炎症や毛艶なども見ておきましょう。気になるところがあったら、スタッフに病歴や治療歴なども確認しておくと安心です。

迎えたい猫のタイプと
自身のライフスタイル

保護猫には、子猫から成猫、高齢猫までおり、活発で遊び好き、のんびり屋さん、シャイなどタイプも多彩です。
子猫は誰から見てもかわいく、見ているだけで癒されますが、エネルギーをたっぷり持って遊びの欲求が強いわりに、健康状態が安定していないため、じっくりと猫と向き合う時間を持てる家庭向きです。共働きなどで留守が多い場合は、成猫が飼いやすいでしょう。活発な猫は、遊んでくれる家族が多い家庭向き。シャイな猫は心を開くまで時間がかかりますので、大人だけで静かに過ごせる家庭の方が安心です。また、「抱っこしたい」「いっしょに遊びたい」「あっさりした子がいい」などの、迎えたい猫への要望によっても合う猫は変わってきます。譲渡会に参加したら、家族構成や生活時間などの家庭環境や、希望する猫について詳しく伝えておきましょう。保護猫には日本猫や洋猫、雑種も純血種もいます。健康で丈夫な猫を求めるのなら、トラ柄などのオーソドックスな毛色の日本猫の雑種が良いでしょう。これから長い期間いっしょに暮らすことを考え、ルックスだけで決めず、家庭環境やライフスタイルに合った猫をマッチングしてもらいましょう。

先住ペットとの相性は
トライアル期間に確認を

動物愛護団体などでは、正式譲渡の前に実際に猫を迎えて生活をするトライアルを行います。特に先住ペットがいる場合は、相性を確かめるためにもトライアルはとても重要です。先住猫がいる場合は、その猫よりもおとなしい猫を。活発な猫だと先住猫にストレスがかかり過ぎることがあるからです。同性同士も不妊・去勢済みであれば、大丈夫な例が多いですね。マッチングの時に、先住動物の種類や年齢、キャラクターなどをしっかり伝えておきましょう。

ただし、マッチングしてもらった猫であっても、動物同士の相性は、ひとつ屋根の下で生活してみないとわかりません。最初は、威嚇し合っていても、数日経つと仲良く遊びだす場合もあるし、問題がなさそうでも、どちらかがストレスで体調を崩す場合もあります。トライアルは、飼い主にとっても、譲渡猫の性格や 習性を理解するための大切な時間。何か気になる点があれば、動物愛護団体のスタッフに遠慮なく相談しましょう。その家での生活に向かないことがわかれば返すことになりますが、問題がなければいよいよ正式譲渡の契約になります。

友森さんから
保護猫との向き合い方の
アドバイス

焦らず気長に構えて、正しい知識で快適な猫ライフを

レスキューされた保護猫たちは、食事やケアなど健康管理がきちんと行われていて、保護している期間、スタッフはお世話するだけでなく、その猫をよく観察して性格や気質も掴むようにしているので、希望者の環境に合うタイプの猫をアドバイスできます。その意味でも保護猫は、ほかの猫よりも飼いやすいと思いますよ。それなのに、保護猫を「かわいそうな猫」と悲観的に言う人がいるのも事実ですが、できれば過去ではなく、幸せな今に目を向けて猫との生活を楽しんでほしいと思います。ただし、新しい家庭に慣れるのには、多少なりとも時間がかかります。これからの長い年月を共に暮らすわけですから、すぐになつかなくても焦らずに気長に構えて、一緒に暮らすうちに変化していく猫との関係を楽しんでくださいね。先日、猫を譲渡した年配の家庭では「猫を迎えたおかげで、孫が頻繁に遊びに来るようになって楽しさが倍増した」と言ううれしい声もいただきました。保護猫を譲渡していると、そんな幸せなエピソードがたくさんあります。譲渡猫とうまく生活するには、次の3つが大切です。

  1. ライフスタイルに合った猫をマッチングしてもらう
  2. 猫の飼育の正しい知識を持って、管理と予防をする(不妊・去勢、完全室内飼い・ワクチンなど)
  3. その猫の個性を理解する

このポイントを押さえて、あなたに合った猫を迎えましょう。

撮影協力:NPO法人ランコントレ・ミグノンの保護猫たち