保護犬の迎え方と向き合い方
犬と暮らしたいなら、保護犬を迎える方法があります。
購入する場合と何がどう違い、ペットとして迎えるには、どうすれば良いのでしょう?
そんな保護犬の迎え方から迎えてからの向き合い方、気をつけたいポイントまでを
NPO法人ランコントレ・ミグノン代表の友森玲子さんに教えていただきました。
お話を伺った方友森 玲子さん
(NPO法人ランコントレ・ミグノン)

動物保護、譲渡活動をするNPO法人ランコントレ・ミグノンの代表。2007年から東京都動物愛護相談センターから、犬や猫を始めうさぎなどの引き取り、受け入れを開始する。2011年、東日本大震災で保護された犬のために、千葉県東金市に犬のシェルターを開設。その後、中野区に猫シェルターを開設。2014年に、ペットサロン、クリニックを合わせた新しい形の一体型の保護活動施設を北参道に誕生させる。株式会社ミグノンプラン代表。今までで、およそ2,000頭の動物たちを受け入れ、ケアしている。
ライター:山ノ上ゆき子
犬との出会いのための
アクションを起こそう!
犬を飼いたいと思った時、まず保護犬を候補にしてはいかがでしょう?譲渡される犬の多くは人間家庭での生活に適性のあるワンちゃんです。保護犬と出会うためには、まず「調べる」というアクションが必要です。住んでいる地域の動物保護施設はどこなのか、付近に譲渡を行っている動物愛護団体があるのかなどを調べましょう。またインターネットの譲渡情報サイトの保護犬たちの写真を見て、「この子がうちに来たら、どんな暮らしになるかな?」と想像することも縁をつなぐ第一歩になります。気になる犬を見かけたら、現在はどんなところで保護生活をしているのか、譲渡してもらうには、どのような手順が必要なのかなども調べておきましょう。

できれば、保護している犬をきちんと管理している団体が良いので、現在の管理状況なども確認できると安心です。動物愛護団体などのサイトでは譲渡条件なども掲載されているので、自分がその条件に該当するのかどうかも、確認しておきましょう。出会い方と検索サイトは、「保護犬・保護猫との出会い方」で紹介しています。
「なぜ犬を飼いたいのか?」
整理してビジョンを明確に
保護犬に限らず、犬を飼おうと思った時にまず「なぜ犬を飼いたいのか?」を自問自答して、その理由と犬と暮らすビジョンを明確にすることをおすすめします。「膝の上で抱っこし、なでながら、のんびりとテレビを見る癒しの時間がほしい」「アウトドアが好きなので、一緒にキャンプを楽しみたい」など、その人によって望むシーンがそれぞれ違うはずです。犬は、超小型犬から超大型犬まで、サイズもまちまちで犬種も多彩。気質や必要な運動量なども異なります。以前、ドライブ好きの家族が譲渡候補の柴犬を希望。しかしその犬は車が大の苦手だったので「ライフスタイルにマッチするのは、こちらのビーグル犬です」と別の犬を勧めたところ、今では「最高のパートナードッグ」として、家族とともにドライブを楽しんでいらっしゃいます。

ルックスだけで犬を選ぶと「こんなはずじゃなかった」ということにもなりかねません。実際、その犬の気質と飼い主さんのライフスタイルとのミスマッチで手放されている犬もいるので、まずは「なぜ犬を飼いたいのか?」を整理しましょう。
譲渡犬は魅力がいっぱい

販売されている犬は子犬がほとんどですが、保護犬は子犬から高齢犬まであらゆる世代の犬がいて、特に成犬が多いのが大きく違うところです。成犬は体の大きさも安定していて、犬種の特徴だけでなく独自のキャラクターがすでにわかっていることが多く、ライフスタイルとのマッチングもしやすいメリットがあります。さらにトイレをはじめ、人間家庭での生活に必要なしつけやトレーニングをしている場合もあり、子犬のしつけに時間を割けない家庭にもおすすめです。夫婦共働きでお留守番が多い家庭は、留守番が難しい子犬よりも平気なタイプの成犬はいかがでしょう?おとなしくて抱っこできる犬が希望なら、抱っこ好きの高齢の小型犬という選択肢もあります。トレッキングのパートナーとなる犬を求めているのなら、中型犬以上の足腰がしっかりしている成犬が安心でしょう。気質の違いは、お世話するボランティアが把握しているので、その家庭に向いている一頭を紹介してもらえるのも魅力です。また、犬種の地域差もあります。東京都の場合は、トイ・プードルや柴犬などの純血種の保護犬が増えています。
譲渡会はお見合いと一緒、
会って確かめよう
写真で一目惚れをしたからと言って、すぐに譲渡を申し込むのはよくありません。写真から受けたイメージと実際に会うと違っていることは、よくあることなので必ず会ってその犬をよく知ることが大切です。譲渡会は、人間のお見合いのようなものです。実際に会って、その犬の表情、行動、サイズ感などを実感しましょう。ただし、譲渡会に参加するには、守りたいマナーがあります。スタッフの許可なく触ったり、食べ物を与えたり、持参のおもちゃで遊ぶのはやめましょう。また、参加している犬は、フレンドリーなタイプから人見知りでシャイなタイプまでいます。正面から近づいたり、じっと見つめられることがストレスになる犬もいますので、まずはスタッフに声をかけましょう。性格やその犬の苦手なこと、接し方の注意点なども教えてもらえるはずです。ケージの中にいる場合も、問題がなければ外に出して抱っこなどをさせてもらえますので、遠慮せずスタッフに確認してください。

譲渡候補犬との
トライアルがあるから安心
譲渡会で希望するワンちゃんがみつかり、あなたのライフスタイルにもマッチすると判断されたら、いよいよ譲渡に向けて一緒に生活するトライアルに入ります。トライアルとは、実際に我が家にその犬を迎えて生活するお試しの期間のことです。譲渡犬には、フレンドリーな万人向きの犬もいますがある刺激に興奮してしまうタイプや特定の苦手なことでストレスをためるタイプ、シャイでなつくまで時間がかかるタイプなど、個性によって接し方に注意が必要な犬もいます。トライアルに入る前に、接し方の注意点などを確認して、トライアル中にちゃんとその内容が守れるのか、家の環境がその犬に適しているか、先住動物がいる場合の相性なども確認します。

トライアルは、飼い主にとっても譲渡犬の性格や習性を理解するための大切な時間。何か気になる点があれば、動物愛護団体のスタッフに遠慮なく相談しましょう。その家での生活に向かないことがわかれば返すことになりますが、問題がなければいよいよ正式譲渡の契約になります。
友森さんから
保護犬との向き合い方の
アドバイス

正しい知識を持って接すれば、最高の家庭犬に
保護犬は問題のある犬だと誤解されることもありますが、多くは飼い主側の問題やトラブルで手放されています。「飼い主の老化や病気などで飼えなくなった」「しつけ方やトレーニングをせず犬が自分たちの手に負えなくなった」「不妊・去勢手術をせずに増えすぎてしまった」など、いきさつはさまざまです。生活環境にマッチした犬を譲渡してもらい、正しい知識を持って接すれば、最高の家庭犬になります。保護犬と上手に暮らすコツは、その子をよく観察して、一緒に過ごす時間を楽しむこと。暮らしているうちに徐々に見えてくるその子の新しい一面や発見を楽しんでください。初めて動物を飼われる方でも、犬との接し方やトレーニングを学んだり、その犬のことを理解しようと真摯に向き合って良好な関係を築いたケースもたくさんあります。新しい家庭に慣れるのには多少なりとも時間がかかるものですが、これからの長い年月を共に暮らすわけですから、焦らず気長に構えてくださいね。 譲渡犬とうまく生活するには、次の3点が重要です。
- ①ライフスタイルに合った犬をマッチングしてもらう
- ②犬の飼育の正しい知識とトレーニング方法を学ぶ
- ③その犬を理解しようと努める
このポイントを押さえて、あなたに合った犬を保護犬から見つけてください。
撮影協力:NPO法人ランコントレ・ミグノンの保護犬たち