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猫のうんちの色・形で見る
毎日の愛猫の健康管理

うんちのチェックが愛猫の健康管理に役立つことは知られています。
しかし異常があったとしても「様子を見ても大丈夫かな?」と、
動物病院への受診をためらう飼い主さんもいるのではないでしょうか。
3日間続いたら緊急性が高い病気の可能性もあることを知っておきましょう。

監修の先生内田 恵子 獣医師(元苅谷動物病院グループ統括院長)

小動物臨床に35年間従事した後、現在は動物病院運営のためのアドバイスを開始している。JAHA内科認定医、JAHAこいぬこねこの教育アドバイザーであり、動物病院で動物の入院中ストレスや診察中ストレスを軽減し、病院で問題行動を作らないような技量を広めるため活動中。

ライター:金子志緒

INDEX

うんちは食べるもので変わる
日頃の正常なうんちの把握が大切

猫のうんちはギュッと硬くてにおいが強いのが特徴です。それは、おしっこと同じように濃縮することや、主食の動物性たんぱく質が、においを出す腸内細菌を増やすことが理由です。ただし、食べているものにも左右されるので、愛猫が食べたものを把握しておくことが大切です。

猫の健康的なうんちの目安とは?

愛猫のうんちを見慣れていると、健康なのかどうか気づきにくいもの。ここでは「健康なうんち」の目安を知っておきましょう。

見るべきポイント 目安
回数 1日1〜2回が理想。食事の変化などで一時的に1日空くこともあったとしても排便している。
細長い楕円形やコロコロした形。しっかり形があって崩れていない。
硬さ 排便の前に体内で水分を吸収するため、硬めになるがカチコチではない。排便したばかりのときは猫砂が周りにつく程度の湿り気がある。
におい 人や犬のうんちと比べてにおいがかなり強い。食事によって多少変わるが、普段とニオイの強さやきつさはだいたい同じ。
(例えば、酸っぱいにおいや食べものが腐ったにおい、普段以上にきついニオイはしていないか)
食べているフードの色よりも濃くて黒っぽい。毛を飲み込んだりしたときには消化されずにそのまま出てくることもある。

猫の種類や大きさ、消化能力の違いにより、うんちの量や状態が変わります。時間が経つと乾燥して状態が変わることもあるので、愛猫が排便した直後のうんちを確認しておくことも大切。
もし急に形やにおいが変わった場合は病気の可能性があります。いつもは安定しているのに月に1回だけおかしいというケースも要注意。うんちの異常に加えて不調(元気がない、食欲がないなど)がある場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

うんちの異常を見逃さない

ここではうんちの状態からわかる病気を紹介しましょう。体重、食欲、嘔吐の有無も合わせて見ることも重要です。

下痢:消化器や胆嚢の病気、三臓器炎に要注意
水のようなうんち(水様便)もやわらかい状態(軟便)もすべて下痢です。形や硬さがあったとしても、うんちの周りにゼリー状の粘液がついていたら下痢と考えましょう。時間が経つと粘液が乾燥したり砂がついて見えなくなったりするので、排便した直後の観察を心がけること。猫の下痢はわかりづらいため、飼い主さんの日頃の健康チェックが重要です。
下痢は消化器や胆嚢の病気によって起こります。猫は三臓器炎(膵炎、胆管肝炎、炎症性腸疾患の3つの病気が併発)することが多く、慢性的に軟便の状態が続くと治療が難しくなります。血液検査で発見できることもあります。
便秘:巨大結腸症、腎不全、脱水の可能性があります
腎臓病や脱水が起きると大腸で水分の再吸収が行われ、うんちがカチコチになって排便しづらくなります。
便秘が続くと大腸(結腸)にうんちが溜まり、直腸の神経に異常が起きて自力で排便できず、巨大結腸症になってしまいます。
体内で水分を吸収してから排便するため、健康な猫でもうんちが毎日出ないこともあります。もし2〜3日以上続く場合は巨大結腸症、腎臓病、脱水(特に老猫)が疑われます。
色の異常:白色は胆嚢、黒色は上部消化管、鮮血は大腸の病気
うんちがところどころ白色の場合、胆嚢から分泌される胆汁が少ないため、消化吸収できなかった脂肪が出てきた状態です。また、膵臓の機能が低下している可能性も。黒色は上部消化管(食道・胃・十二指腸)の出血です。鮮血の場合、大腸からの出血など深刻な異常が起きていると考えてください。大腸ポリープができると、うんちに縦に線状の鮮血がつくこともあります。
寄生虫感染:肉眼では見えない寄生虫もいるのでPCR検査を
うんちに米粒や白いひものようなものが混ざっていたら、条虫などの寄生虫です。動物病院で駆虫薬を処方してもらいましょう。主にノミが媒介するので室内の掃除や駆除も必要です。顕微鏡でなければ見えないトリコモナスなどの寄生虫もいるので、治りにくい下痢やうんちのにおいが強い場合は、複数の病原体を一度に検査できる下痢パネル(PCR検査)をおすすめします。
特に保護したばかりの子猫にはトリコモナス、コクシジウム、ジアルジア、コロナウイルスの感染が多い。下痢を放置していると小腸の絨毛(栄養を吸収するための突起)が育たず、成長が遅れたり体重を維持できなくなったりします。
異物が混じる:ウールサッキングや毛球症を疑って
グルーミングをしたときの毛が少量混じる程度であれば問題ありません。タオルの切れ端などの異物が混じっている場合、異物を吸ったり噛んだりして食べてしまうウールサッキング(毛織物吸い行動)の可能性があります。早期離乳が要因と考えられる常同行動の一種で、好みの素材を見つけると繰り返すため、猫にとって安全な環境を整えることも重要です。
もし肛門から異物が出ていたら手を触れずに動物病院を受診してください。異物を引っ張ると腸が裂けてしまうことがあります。
また、過剰なグルーミングで飲み込んだ毛がかたまりになる毛球症は、腸閉塞を起こす危険もあります。

様子を見てもよいのは3日間。
早めに動物病院を受診する

不調が1日なら家庭で絶食や整腸剤を試してみましょう

下痢や便秘が1日で済めば一過性の変化の可能性もあります。家庭でできる24時間の絶食、整腸剤の服用、食事の切り替えで様子を見てもよいでしょう。動物病院に写真やうんちを持って行って相談すると安心です。体調変化がなくても寄生虫や細菌が見つかるかもしれません。健康であっても混合ワクチン接種や健康診断のときに見せたほうが安心です。

異常が3日間続いたらすぐに動物病院へ

様子を見て異常が3日間続いたら慢性の状態なのですぐに動物病院へ。うんちの異常に加えて嘔吐や食欲不振も起きている場合は、緊急で受診するべきサインと考えましょう。
猫はストレスを感じるとおしっこの異常が出やすいものの、まれにうんちにも変化があります。食事や生活環境が変わったり来客が続いたりするなど、ストレスになることがあったかどうか念のため振り返ってみましょう。

猫が逃げないように洗濯ネットを使うのがおすすめ

猫を動物病院に連れて行くときは洗濯ネットに入れて、上と横から出し入れできるキャリーを利用しましょう。いつも使っているタオルでくるむと安心します。動物病院の前で猫が脱走する事故を何度も見てきたので、安全のために洗濯ネットをおすすめします。

排便の姿勢のチェックや
腸内細菌を育てる食事で
健康に

正常な排便の姿勢を覚えておくことも病気の発見につながります。いきんでも出なかったり、いつもと違うところで排便したりしたときは、異常のサインと考えましょう。人間で注目されている「ロコモティブシンドローム(加齢によって筋力や関節などの運動器が衰える)」が猫にも起きていることがわかってきました。トイレの近くをうろうろするのに入らない場合、排便時に関節などに痛みを感じてトイレに嫌な印象をもってしまったのかもしれません。
体質に合わない食事が原因でうんちの状態が不安定になることもあるので、腸内細菌を育てるフードを選ぶのも一案。災害時などに備えて食べられるフード(ドライとウェット)を増やすことにもつながります。フードを変えるときは、今までの食器に新しいフード、新しい食器に今までのフードを入れて与えるのがコツ。フードを転がして与えると猫が興味を惹かれて食べることもあります。

猫は下痢や便秘になっても平気な顔をしていることも少なくありません。うんちの異常だけでなく、猫の行動や姿勢も毎日の健康チェックに入れましょう。多頭飼育の場合はそれぞれのお気に入りのトイレや場所を把握しておき、排便しているタイミングで確認できれば理想。飼い主さんの観察力が猫の病気を早期発見する鍵になります。