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犬の吠える理由 Vol.3
~シーン別「吠えグセ」の対策方法~

「叱っても、吠えが減らないので困っている」という飼い主さんは、意外と多くいます。
それは、今までやってきた方法が間違っている可能性があるので、まずはリセットしてみましょう。
今回は、シーン別の吠えるお悩みについて、JAHA認定家庭犬しつけインストラクターの矢崎潤さんにアドバイスをいただきました。

お話を伺った方矢崎 潤さん
(JAHA認定家庭犬しつけインストラクター)

公益社団法人 JAHA(日本動物病院協会)認定家庭犬しつけインストラクター 同協会インストラクター養成講座委員会アドバイザー/公益社団法人 日本愛玩動物協会講師/日本獣医生命科学大学 非常勤講師/帝京科学大学 非常勤講師
「ほめるしつけ」がポリシー。犬の行動学と学習理論、動物福祉に基づくトレーニングスタイルは、わかりやすく、安全かつ効果的と多くの信頼を得ており、環境省をはじめ、動物行政関係者向けの研修会の講師、民間愛護団体でのセミナー等でも指導を続けている。著書に「幸せな子犬の育て方」大泉書店、「犬のしつけきちんとブック」シリーズ(トイレ、吠え、留守番、咬みグセ)高橋書店などがある。

ライター:山ノ上ゆき子

INDEX

インターホンに吠える

お悩み①

通販の荷物がよく届くのですが、インターホンが鳴ると興奮して吠え続けてしまいます。近所迷惑になりそうで困っています。

インターホンが鳴ると吠える犬は、すごく多くいます。インターホンに反応して、子どもが「誰か来たよ」と声に出すのと同じで、犬にとっても正常な行動です。しかし、犬は吠える経験を積めば積むほど、同じシーンで吠えることが習慣化していきます。これ以上吠える経験を積ませないためにも、吠えない環境を整えることが吠えグセ防止の有効なポイントになります。インターホンへの吠えグセがついて困っているのなら、まずは吠える習慣をストップさせるために、インターホンを鳴る回数を減らせるようにマネジメントしましょう。「インターホンが鳴らない生活なんて、ムリ!」と思うかもしれませんが、今の時代は便利なスマホや携帯電話があるので、インターホンを使用する可能性がある人にあらかじめ連絡することができると思います。

その8割が宅配便であれば、事前に在宅時間を指定し、携帯電話などに連絡を入れてもらうようにするか、コンビニ受け取りなどに変更することでカバーできます。それだけでも、愛犬の吠えが8割軽減することにつながりますね。また残りの2割が来客だったとして、近年では突然の来客はなかなかないと思うので、到着前に携帯電話に連絡を入れてもらうようにすれば、大きな割合でインターホンが鳴らない生活が可能になると思います。また、集合住宅や住宅密集地に住んでいて子犬を迎えた方は、インターホン吠えが習慣化する前にすぐに予防を始めましょう。インターホンを鳴らすたびに、飼い主さんから子犬にフードを与えてください。インターホンが鳴ったら、飼い主さんの側に行けば美味しいフードがもらえると教えていきましょう。吠えが習慣化する前に予防することはとても大切なことです。

来客に吠える

お悩み②

友だちを我が家に呼びたいけれど、以前来客があった時にすごく吠えたので無理かもしれないと悩んでいます。

来客が家に入ると、落ち着いて会話ができないほど、ワンワン吠えてしまう犬には、2つのタイプが考えられます。まずは来客が大好きで歓喜・興奮吠えをするタイプです。このタイプは、来客が撫でてくれると落ち着く場合がほとんどなので、最初に来客と挨拶をさせてあげましょう。もうひとつは、怖がりタイプです。来客に向かってワンワン吠えるけれど、来客が手を出すと飼い主さんの後ろに隠れ、手を引くとまた吠えながら出てくるような行動を繰り返します。自宅は、犬にとってもパーソナルな場所。そこに入り込む人間を侵入者だと考え、防守吠えをするタイプです。インターホン吠えもあるかもしれないので、来客の予定がある時は、最寄りの駅やバス停まで迎えに行くなど、事前に家の外で待ち合わせることを約束して、犬と一緒に迎えに行くのがオススメです。外で対面して一緒に歩きながら自宅へ向かい、お客さまに先に家の中に入ってもらうと、犬は来客を侵入者だと思わなくなり、吠えがかなり予防できるでしょう。

おねだりで吠える

お悩み③

抱っこしてほしい時や、食べ物が欲しい時に吠えます。早く静かにして欲しくてついつい応えてしまいます。

愛犬におねだりされて、うれしいと感じる飼い主さんは多いと思います。しかし、要求吠えの原因が自分だとわかっていながら、ついつい応えてしまう。それを続けていれば、もちろん吠えは減りませんよね。それがもしも、ところかまわず四六時中だったとしたら、飼い主さんは我慢できたとしても周囲に迷惑がかかってしまいます。家族で応じる要求の線引きをしておき、おねだりの方法にもルールを作りましょう。例えば、前足で飼い主さんをつつく場合は要求に応じるけれど、吠えた場合は飼い主さんがその場を立ち去り、犬の前から姿を消すといった感じです。要求吠えに対してはそばにいて無視をする方法もありますが、今まで要求を叶えて学習してきた犬は、なかなかあきらめず、飼い主さんとの根くらべになってしまいます。それよりもその場を去る方が、吠えても意味がないことに犬が早く気づきやすく、続けることで吠えは減ってくるでしょう。

要求吠えの激しい場合は、どのシーンで激しく吠えるのか、観察してきっかけを見つけましょう。例えばそれが、家族の食事中だったとしたら、ドッグフードを詰めた知育玩具を犬が吠える前に与えてしまいます。「吠える」口が知育玩具に詰めたドッグフードに夢中になっていれば、要求吠えはできませんよね。人間の食事時間をワンちゃんが知育玩具で遊ぶ時間にするなど、仕事を与えてあげることで要求吠えを軽減することができます。

他の犬に向かって吠える

お悩み④

お散歩に出た時、他の犬を見かけたら吠えるようになりました。以前は、吠えなかったのに、最近は毎回吠えるようになり困っています。

こちらも2つのタイプが考えられます。ひとつ目は、他の犬が大好きで、挨拶や遊びがしたくて吠えてしまうタイプ。このタイプの犬はリードがついていることで、自由に挨拶することができず、相手の犬に近づくまで吠え続けます。近くまで行ってしまえば吠えることはなくなるため、ドッグランなどでは楽しく遊べるタイプです。
このタイプの犬の多くは、散歩に行くと、他の犬しか目に入らなくなってしまう傾向があるので、飼い主さんは散歩に出かける際には、その犬が大好きなオヤツやおもちゃを持って、他の犬ではなく飼い主さんに注目すればより良いものがもらえると、まずは理解してもらうことから始めると良いでしょう。全ての犬に挨拶するのではなく、上手にすれ違うことができるようにご褒美で誘導して褒めてあげると良いでしょう。

もうひとつは、「怖がって他の犬に吠える」タイプです。これは、他犬とのコミュニケーションを身につけやすい子犬のうちに適切な遊びや挨拶の経験が少なかった犬に多くみられる傾向があります。外に散歩に行く機会が少なかったり、他の犬に会った際に吠えられて、怖い思いをしてしまったまま良い経験を積む機会がなかったりすると、他の犬とどう接してよいかわからず、怖くて吠えてしまうことが多いのです。この状況を減らすには、無理強いはせず、他の犬とは安心できる距離を保って、遠くから他の犬を見ても吠えない時に、オヤツなどを与えて褒めてあげることがオススメです。距離が近すぎて恐怖心が強くなると、吠えたり、オヤツが食べられなくなりますから、必ずその犬が安心できる距離をとり、少しずつ時間をかけて慣らしていく必要があります。

トレーニングの効果が出て、怖いものなど吠えたい対象が存在しても吠えずにやり過ごすことが出来るようになれば、お出かけが楽しくなり、犬も飼い主さんも生活が豊かなになるでしょう。

悪化させるより、
専門家の手を借りて
トレーニングを

愛犬をよく観察して、吠える原因を見つけて、自分で対策ができる飼い主さんもいらっしゃいますが、考えても「なぜ吠えているのかわからない」、吠えている理由がわかったけれど「対処法がわからない」「トレーニング方法がわからない」という飼い主さんも多いはずです。そんな時は、専門家に相談してください。犬の専門家であるインストラクターの手を借りるのは、山岳ガイドについてもらうようなものだと思ってください。もしも、これから富士山に登るとして、今まで他の山を複数登った経験のある人なら、自分たちで準備して、富士山に挑戦することもできるかもしれませんが、登山の知識もなく初めて登山する人なら、山岳ガイドをお願いした方が安心です。準備する服装や道具から、初心者でも登れるコースを案内してもらえ、さらにアクシデントがあった場合の安全策も講じてもらえます。犬の飼育やしつけも同じことだと思って、気軽に相談してみてください。また、家の中だけでは解決しにくい、他の犬に慣れさせる社会化のトレーニングなどは、教室に通うのも良いでしょう。安全面を管理し、科学的で犬にやさしいしつけ方を飼い主に指導する家庭犬のインストラクターなどがオススメです。