犬のうんちの色・形で見る
毎日の愛犬の健康管理
愛犬がうんちをしたとき「急いで片付けなきゃ!」と思いたくなるかもしれません。
しかし、うんちの色や形には体調が現れ、血液検査ではわからない病気を発見できることも。
ぜひ毎日の健康チェックにぜひ取り入れましょう。
ここでは肛門括約筋の鍛え方や腸内細菌の大切さについても紹介します。
監修の先生内田 恵子 獣医師(元苅谷動物病院グループ統括院長)
小動物臨床に35年間従事した後、現在は動物病院運営のためのアドバイスを開始している。JAHA内科認定医、JAHAこいぬこねこの教育アドバイザーであり、動物病院で動物の入院中ストレスや診察中ストレスを軽減し、病院で問題行動を作らないような技量を広めるため活動中。
ライター:金子志緒
うんちは食べるもので変わる
日頃の正常なうんちの把握が大切
最初に伝えたいのは、うんちは食べたものによって決まるということ。また、犬は肉食に近い雑食で人よりも腸の長さが短く、人なら消化できる食物繊維などでもそのまま出てきてしまうことも珍しくありません。愛犬が食べたものや家族がおすそ分けしたものを把握しておくことも必要です。
犬の健康的なうんちの目安とは?
毎日のように出る愛犬のうんちを見慣れていると、健康なのかどうか気づきにくいもの。ここでは「健康なうんち」の目安を知っておきましょう。
見るべきポイント | 目安 |
---|---|
回数 | 排便は朝晩1回ずつ、散歩のときなどに出ることが多い。小食の犬は1日1回になることもある。 |
形 | 大腸に停滞していた時間が短ければ細長い形になり、長ければ短くてコロコロした形になる。食物繊維の含量が多い食事の場合はコロコロして大きめ、可溶性繊維が多ければ長くて大きめのうんちが出る。 |
硬さ | うんちを片付けたときに、跡が残るか残らないかくらいの湿り気がある。カチコチではないがつまんでも崩れない程度が目安。 |
におい | 食事によって変わるが、健康的な腸内環境であれば異様なにおいはしない。湿り気のあるうんちなら排便後にふわっとにおいが漂う。カチコチだとにおいに気づきにくい。 |
色 | 食べている食事の色が反映された茶褐色。野菜や草を食べたときには、消化されずにそのまま出てくることもある。 |
体の大きさや消化能力などの個体差もあり、同じ食事でも犬によってうんちの量や太さが変わります。健康の目安となるうんちと少し違ったとしても、その状態で安定しているなら、愛犬にとっては正常なうんち。もし大きく違う場合や急に変わった場合は、病気の可能性があるので動物病院を受診してください。
うんちと一緒に肛門腺から分泌液が出ることがあります。この分泌液はにおいが強く、イカやスルメにたとえられるほど。うんちのにおいと間違えないように、愛犬のにおいを知っておきましょう。
うんち・排便の様子・
肛門の状態でわかる病気の異常を見逃さない
健康チェックには、うんちに加えて「排便の様子」と「肛門の状態」の確認も重要です。3つを合わせて見ることで異常の原因をある程度絞れます。
- 【下痢】大腸と小腸のどちらに原因があるのかチェック
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下痢(水様便や軟便)の原因は大腸と小腸に分けられます。大腸性の下痢の場合、しぶり(排便の姿勢になるのにゼリー状の粘液しか出ない、排便回数が多い、鮮血が混じる、といった異常があります。
小腸性はしぶりがなく、下痢がだらだらと出て量も多いのが特徴です。出血している場合、黒くて生ぐさいうんちになります。消化吸収の機能が低下するので、体重が減っていきます。
- 【便秘】消化管や腎臓の病気、クッシング症候群、がんの疑い
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便秘の原因は大きく分けて2種類。排便の姿勢になっても出ない(排便困難)、排便の姿勢にならずうんちも出ない、というケースです。
高齢の未去勢オスに多い前立線肥大や会陰ヘルニア、肛門周囲腫瘍の場合、患部が直腸や肛門を圧迫してうんちが出にくくなります。排便の姿勢を繰り返しても粘液ばかり出るのが特徴です。会陰ヘルニアは肛門の周りを圧迫するので、うんちの断面が丸い状態から平たい形になります。肛門まわりの病気は盛り上がったりして形が変わるため、見た目の変化もチェックしておきましょう。
クッシング症候群などの内分泌の病気は、うんちが溜まっても消化管が反応しなくなります。排便したがらないので、うんちが大腸に停滞してカチコチになってしまいます。脱水が起きる腎臓病などでも同様の状態になることがあります。
- 【色の異常】白色は胆嚢、黒色は上部消化管、鮮血は大腸の病気
- うんちがところどころ白色の場合、胆嚢から分泌される胆汁が少ないため、消化吸収できなかった脂肪が出てきた状態です。黄色やオレンジ色は小腸の異常、黒色は上部消化管(食道・胃・十二指腸)の出血です。鮮血の場合、大腸からの出血など深刻な異常が起きていると考えてください。大腸ポリープができると、うんちに縦に線状に鮮血がつくこともあります。
- 【寄生虫の感染】うんちに異常がなくても便検査を
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症状が出ていなかったとしても、鞭虫や回虫、コクシジウムなどの寄生虫に感染していることも少なくありません、子犬は寄生虫を駆除したとしても最初の半年には2カ月に1回、便検査をおすすめします。成犬や老犬でも定期的な健康診断の際に行ったほうが安心です。うんちの後半部分を1cm四方程度の取り、食品用ラップやアルミホイルで包んでなるべく早く(できれば当日)に動物病院に持っていきましょう。
また、動物病院で複数の病原体を一度に検査できる下痢パネル(PCR検査)を申し込むのも良い方法です。この検査は、院内で行うため、飼い主がうんちを持っていく必要がなく、感染性の下痢の原因をまとめて調べることができます。
知っておきたいお手入れや
薬を飲ませたときの注意
肛門を拭きすぎて犬をお手入れ嫌いにさせてしまう
散歩から帰っておしりを拭くときは、犬に嫌な印象を与えないことが大切。しっぽを引っ張ったり体を押さえたりしないで、自然に立たせた状態でやさしく拭いてあげましょう。知育玩具の「コング」に食べ物を入れて足で踏み、犬に食べさせて気をそらしながら拭くのも良いアイデアです。
散歩中にうんちをするたびに拭くのはやりすぎ。デリケートな部分なので帰宅してから1回拭けば十分です。
うんちの状態が悪くなっても食物アレルギーと思わないで
うんちの異常があると、食物アレルギーを疑う飼い主さんもいますよね。しかしアレルゲンになるのは環境要因(ハウスダストなど)が多く、食物アレルギーは決して多くはありません。アレルギー検査も再現性がない(毎回同じ結果が出るとは限らない)ので過信は禁物。
もしフードを変えたときにおなかがゆるくなった場合、単にそのとき調子が悪かっただけということもあるので、時間を置いてもう一度少量を食べさせてみましょう。
薬を飲ませたときは消化できているか確認を
動物病院では人間用の薬を犬に処方することがあります。錠剤は表面が糖衣でコーティングされていることが多く、犬の腸で消化できずうんちに混ざって出てきてしまうことも珍しくありません。特に下痢のときには流されてそのまま出てくることが多いです。動物病院に飲ませ方を確認しましょう。
肛門括約筋と腸内細菌で
健康を守ろう
歳を重ねると肛門括約筋が衰えてきますが、じつはしっぽを振ると鍛えられるのです。また、朝起きたときに後ろ足の伸びをすることも大事。よく見ると肛門がピクピク動いているのがわかると思います。愛犬がシニアになってもたくさん声をかけて一緒に遊んで、しっぽを振る機会をつくってください。後ろ足のストレッチをしなくなったら、飼い主さんが補助して伸ばしてあげるのも良いアイデアです。ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのようにしっぽを根元から断尾している犬は、ストレッチを手伝ってあげましょう。
最近注目されている腸内細菌を育てるのもおすすめ。腸内細菌の栄養になるオリゴ糖などを含むフードを与えるのも一案です。防災の観点からもいろいろなフードを食べる習慣を身に付けさせましょう。1日のカロリーの10%程度であれば、うんちの状態を見ながら愛犬の好物や食物繊維を含むサツマイモをトッピングするなど、食の楽しみも加えてあげてください。
血液検査で何でもわかると思っている飼い主さんもいますが、消化器の病気はよほど進行しない限り血液に異常が出にくいのが特徴です。定期的に便検査やPCR検査がおすすめ。毎日のうんちのチェックでも病気の早期発見に役立ててくださいね。
運動やコミュニケーションも健康の維持に役立ちます。愛犬と頭と体と心を使って遊び、おなかも動きも良くしてあげましょう。