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愛⽝の年齢は⼈間に換算すると何歳?
⽝と⼈間の年齢換算表

犬は人よりずっと寿命が短い生き物。だからこそ、
愛犬の年齢が人に換算してみるとどのくらいなのか愛犬と暮らす方なら一度は考えたことがあるものです。
あなたの愛犬が人の年齢だと何歳くらいなのか、現在どのライフステージにいるのか、一緒に確認していきましょう。

お話を伺った方尾形 聡子

東京の下町にてスパニッシュ・ウォーター・ドッグのはなと暮らす。慶応義塾大学法学部卒業後、映画会社勤務を経て東京大学大学院農学生命科学研究科に入学。応用動物科学専攻・細胞生化学研究室にて修士課程修了。著書の「よくわかる犬の遺伝学」をはじめ、雑誌やWebなどに記事を執筆し、現在は犬のブログサイト「犬曰く」を運営、執筆中。難しいと思われがちな犬のサイエンスをわかりやすい言葉で伝え続けている。 https://inuiwaku.net/

INDEX

これまでの犬=人年齢換算方法

これまで、世界的に犬の1年は人での7年に相当すると言われてきました。7歳の犬なら人で49歳、10歳の犬なら人で70歳、15歳なら105歳…本当に!?ただし、これは非常にざっくりした計算方法で、犬種や体の大きさによって寿命が異なる犬すべてにしっくり当てはまるものではありません。犬は哺乳類の中では珍しく、体が小さいほど寿命が長くなる傾向にある生物なのです。寿命の長さこそ違いますが、子孫を残すために性成熟し、細胞の老化が進んでいくことで命を閉じるという流れはあらゆる哺乳類に共通しているため、同じようなライフステージを送ります。犬においては、「受精→出生→子犬期→ジュニア期→若年成犬期→成熟成犬期→シニア期→老年期」というような流れで、年齢を重ねながら各ステージを進んでいきます。犬のこのようなライフステージの変化は、これまで「性成熟」や「老化の兆候」といった目に見えるイベントを元に考えられてきました。

ただし、どのライフステージでも常に7をかければいい、という単純なものでもありません。たとえば性成熟は、小型犬なら早ければ生後半年を過ぎたころに、超大型犬になると1歳を超えてから、と差があります。人においても差はあるものの7歳で性成熟することはありません。つまり、犬は人よりもいわゆる「成人」になるまでの期間が早く過ぎていくと言えます。

そこで、最近ではもう少し細かい計算式が使われるようになっているようです。環境省が出している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」には、小型〜中型犬の場合「24+(年齢-2)× 4」、大型犬の場合「12+(年齢-1)× 7」という式が掲載されています。小型〜中型犬は1歳で人の15歳、2歳で24歳相当になり、その後は1年ずつ4歳ずつ年齢を重ねていき、大型犬では1歳で人の12歳、それ以降は7歳ずつ歳を重ねるということです。

出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide_1808/pdf/full.pdf

最新の年齢換算方法:
エピジェネティック時計に着目

このように、犬の人対応年齢を正確に知るのはなかなか難しいことではあるのですが、2019年、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校が率いる研究チームが新しい「犬=人年齢換算方法」を発表しました。犬がどのくらいの年月をかけて各ライフステージを進んでいくのか、細胞の老化の状態に着目。まずはラブラドール・レトリーバーを対象として科学的な検証を行ったのです。

近年、年齢を測る指標として「DNAメチル化」という、細胞の中にあるDNAの化学的な変化に注目が集まっています。DNAのメチル化はエピジェネティクスという広く生物に関わる生命現象を担うメカニズムの一つで、主に、受精卵から体を作りあげ、そして生命を維持していくためのタンパク質やホルモンなどをいつ、どこで、どのくらい作るかというタイミングを制御しています。たとえば、歯の生え変わりはある一定の時期にDNAメチル化状態が変化することで「永久歯を生やす」ための指令が出されるために起こります。そして生え変わりが終われば再びDNAメチル化状態が変化し、その指令はその後の人生において二度と出されないよう保たれます。このようなDNAメチル化状態は、体の成長過程だけでなく、加齢によっても変化していくことが、これまで人やマウスなどの研究などから分かっています。

そこで研究チームは、実年齢(暦年齢)ではなく、生物学的にどのくらいの細胞年齢にあるのかという視点から、エピジェネティック時計とも呼ばれるDNAメチル化状態を、0〜16歳のラブラドール・レトリーバー104頭を対象に調べました。さらに犬=人の年齢換算式を求めるために、1〜103歳の320人のヒトのメチル化状態とそれとを比較解析しました。

その結果、以下のような数式が導き出されました。

犬と人、
ライフステージの変化スピードの違い

また、同研究では犬と人のライフステージの変化も比較していています。「幼年期」は乳児期から思春期に入るまでで、犬では2〜6ヶ月齢、人では1〜12歳、続く「青年期」は思春期から成長が完了するまでで、犬では6ヶ月〜2歳、人では12〜25歳、その先の「壮年期」と呼ばれる青年期とシニア期の間の期間は、犬では2〜7歳、人では25~50歳、最後の「シニア期」は平均寿命までの期間となり、犬では12歳くらいまで、ヒトでは70歳くらいまでとなるそうです。このことから、ライフステージの区切りにおいて犬は人より寿命に対する成長期の期間が短く(早く成熟する)、シニア期の期間が長めであるのが分かります。

出典:©Tina Wang, Jianzhu Ma, Andrew N. Hogan, Samson Fong et al., bioRxiv(2019), doi:
https://doi.org/10.1101/829192

換算年齢を知り、愛犬の健康維持・向上のために役立てましょう

今回紹介しました犬=人年齢換算は、あくまでも研究対象となったラブラドール・レトリーバーについてのことですので、あらゆる犬にぴったりと当てはまるかといえば、決してそうではありません。もしかしたら近縁のゴールデン・レトリーバーなどはある程度近い数値になるかもしれませんが、犬種や体の大きさによってその寿命は非常にばらつきがあるという事実があるためです。たとえば、2013年のイギリスの研究では、研究対象となった36犬種の中で最も寿命が長かったのがミニチュア・プードルで14.2歳、一方で、最も短かったのがボルドー・マスティフで5.5歳と、その差はなんと2.5倍以上もありました。また、2018年の日本の研究では、ラブラドール・レトリーバーが14.1歳、最も長かったのが柴犬で15.5歳、最も短かったのがフレンチ・ブルドッグで10.2歳となっていました。このように、犬は体が小さくなるほど寿命が長くなる傾向にあるものの、大きいからといって必ずしも寿命が短いわけではないことも示されています。犬種に特有な遺伝病なども、寿命に影響していることが考えられます。

とはいえ、愛犬がいまどこのライフステージにいるのか、人に置き換えたら何歳くらいになるのかは、飼い主として把握しておきたいことですよね。それを意識しておければ、よりいっそう、愛犬の健康状態への理解を深めやすくなるはずです。

以下の表は犬の筋肉状態がどの程度になっているかの指標になります。犬種や性別によって筋肉のつき方は異なりますが、愛犬の筋肉状態チェックにぜひ役立ててみてください。皆さんの愛犬が寿命を迎えるなるべくギリギリまで、自分の足で歩き、一緒に遊ぶ楽しい時間を共有し、健康でいられますように!

Muscle Condition Score

A.正常な筋肉量

B.軽度の筋肉の喪失

C.中程度の筋肉の喪失

D.重度の筋肉の喪失

出典:https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/Muscle-Condition-Score-Chart-for-Dogs.pdf

【参考文献】
・Quantitative Translation of Dog-to-Human Aging by Conserved Remodeling of the DNA Methylome
https://www.cell.com/cell-systems/fulltext/S2405-4712(20)30203-9?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS2405471220302039%3Fshowall%3Dtrue
・環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide_1808/pdf/full.pdf
・2013年のイギリスの研究
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1090023313004486?via%3Dihub
・日本の研究
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6068313/