愛猫を「生活習慣病」にさせないためには
猫ちゃんの行動が「いつもと少し違う」と感じたら、何がどう違うのか注目して観察してみましょう。
飼い主のそんなちょっとした気づきが、「生活習慣病」の予防につながることをご存じですか?
お話を伺った先生村田 香織 獣医師
(もみの木動物病院)
兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。
著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。
ほっとくと怖い生活習慣病
肥満を放置しているとどうなるのでしょう?
肥満によって、糖尿病や高脂血症、高血圧などの病気を引き起こすだけでなく、肥満の状態のまま高齢になると、関節、靭帯、椎間板を痛めやすくなり歩けなくなる可能性がでてきます。さらに、脂肪が多くなると肝臓への負担も大きくなります。体重が増えるということは、普段から重たい脂肪を担いで生活することになり、心臓などの臓器に負担がかかります。それにより寿命が短くなり、死亡の危険も高くなります。元気に過ごしていて、今のところ目立った症状がなくても、肥満の状態が続いているなら、水面下で生活習慣病が進行しているかもしれません。ペットは不調があった時、ひとりで病院へは行けないし、話すこともできません。飼い主さんの気づきが重要です。
飼い主の観察力と、
きちんと伝えることが、
早期の病気発見に
もしも愛猫が生活習慣病かもしれないと感じたら、どうすれば良いのでしょうか?
生活習慣病に関わらず、何か病気の症状が見られたら、なるべく早く動物病院で獣医師の診察を受けることが大切です。その時に大切なのは、気になる症状やいつもと違うところが猫ちゃんにないか、細かくチェックしておき、かかりつけの獣医師へ伝えることです。
例えば、自宅で猫ちゃんにくしゃみの症状が出ていても、診察中にくしゃみをしなければ、獣医師は気づくことができません。それまでにどんなくしゃみをどのぐらいの頻度でしていたかなど、伝えるようにしましょう。気になることがあったら、いつ、どこで、どんな感じだったのかなどメモをしておき、獣医師に相談してください。
言葉での説明が難しい時は、携帯電話などで愛猫の症状を動画撮影して、それを獣医師に見てもらうのも伝わりやすいと思います。大切なのは、愛猫の健康な時の状態を知っておくことです。その状態と比べて、どうなのかを生活の中でチェックしておきましょう。
気を付けたい症状と可能性がある病気には、どんなものがあるのでしょうか?
食欲や元気があるかどうか、おう吐の有無、便の状態など、症状にはいろいろあります。気を付けたい症状とその症状から疑われる疾患にはこのようなものがあります。
主な症状 | 疑われる疾患 |
---|---|
「食べない」 「食べ方がおかしい」 「よだれが多い」 |
口内炎 |
「口臭かある」「いつもと食べ方が違う」 「くしゃみをする」 |
歯周疾患 |
「呼吸がおかしい」 | 呼吸器系の疾患 |
「「動きたがらない」「高いところに上らない」 | 関節疾患 |
「大量に水を飲む」「排尿量が多い」 | 腎臓疾患 |
「尿の色が濃い」「何度もトイレに行く」 「トイレに行っても出ない」 |
泌尿器疾患 |
「おう吐」「下痢・軟便」「血便」 | 消化器系の疾患 |
「しこり」 | 腫瘍 |
症状から疑われる病気があったとしても、ひとつの症状だけで判断することはなく、必要に合わせて血液検査や尿検査、エコー、レントゲン、心電図、病理検査などを行って、猫の病気を診断します。治療方法も、その猫ちゃんの体質や進行状態によっても異なります。そのあたりは、受診された動物病院とよく相談して決めてください。ただし、どんな病気も悪化してから治療するより、初期で発見できれば、それだけ早く対処ができるので、治る可能性も高くなります。
飼い主の管理で左右される
生活習慣病。
メリハリある生活を心がけて
愛猫が生活習慣病にならないために、飼い主が心掛ける予防策はありますか?
予防として有効なのが猫ちゃんの頭とカラダを使う刺激のある生活です。刺激が少ないと食べることに気持ちが行ってしまうので太りやすくなります。そうならないように、家の中で猫ちゃんにとって楽しいことがどれだけ作れるかが飼い主さんの腕の見せどころです。「食べる楽しみ」を取り上げるのではなく、キャットフードを与える方法も、猫の狩猟本能を刺激する疑似ハンティングのような運動を取り入れるといいでしょう。
例えば、ペットボトルに穴をあけておき、そのボトルの中にキャットフードを入れます。そして、転がすとフードが穴から出ることを猫ちゃんに教えて、ペットボトルを与えます。すると猫ちゃんは前足を上手に使って、ペットボトルを転がし、遊びながら楽しく食事が楽しめます。
さらに運動不足は、ストレスや問題行動の原因になるので気をつけてください。年齢や個体差もありますが、猫ちゃんには15分程度の遊びを1日3回は、行って運動をさせましょう。鳥やネズミなどの疑似ハンティングになる猫じゃらし遊びや壁に当てた光を追いかけさせる遊びなどを取り入れるのも良いでしょう。また猫ちゃんもフードをご褒美として与えることで、犬のように「ハイタッチ」や「膝に乗る」などのトリックを教えることができます。飼い主さんとの良いコミュニケーションになりますよ。
まずは、今の生活を見直しながら、セルフチェックをしてみましょう。