こねこ塾に潜入! Vol.2
〜ハンドリングの練習をしよう〜
ブラッシング、爪切り、歯磨きなど、猫ちゃんの健康管理のために、
私たち飼い主が自宅でいろいろなケアをしてあげる必要があります。
スムーズにケアを行うためには、体のどこを触っても猫ちゃんが嫌がらないように慣らすことが大切です。今回は、
こねこ塾のカリキュラムの中から、「ハンドリング」についてご紹介します。
お話を伺った先生村田 香織 獣医師
(もみの木動物病院)
兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。
http://www.mominoki-world.net/
猫を上手にハンドリングしよう
「ハンドリング」とは、本来取り扱いや操作という意味ですが、こねこ塾では撫でたり抱っこしたり、全身をくまなく触ることを指します。爪切りやブラッシング、歯磨きなどのケアを猫が快く受け入れられるように、どこを触っても嫌がらないように慣らしておくことは非常に大切。成猫になってから急にいろいろな部分を触ると嫌がることが多いので、子猫の時から体中をやさしく触る習慣をつけて慣らしておく必要があります。このときのポイントは、子猫が「スイッチオフの時」にすることなのだそうです。起きている時に体を触ると嫌がって咬んでくることもあるため、おもちゃなどでしっかり遊んだ後や食事の後など、猫がのんびり眠っているようなタイミングでやさしく撫でていきます。また、ごはんやおやつを夢中で食べている時もチャンスなんだとか。猫が気持ちよくリラックスできる状態の時に、全身を触られることに慣らしていきましょう。ハンドリングは、ケアはもちろん、飼い主さんとのコミュニケーションのためにもとても有効なのです。
子猫を幸せ気分にする
歯ブラシブラッシング
村田先生はハンドリングに慣らす方法として、歯ブラシを使って顔の周りなどをブラッシングする「歯ブラシブラッシング」を推奨しています。母猫は子猫の体を舌で舐めてきれいにしますが、歯ブラシで撫でた時の感触は、猫の舌で舐めた時の感触によく似ているので、歯ブラシブラッシングは子猫に受け入れられやすいそうです。成猫でも仲の良い猫同士はお互いの体を舐め合って毛づくろいをしますが、特に自分で毛づくろいができない、顔の周りなどを舐め合います。一般的に、猫は心を許している相手にあごや顔など頭の部分を撫でられると喜ぶことから、歯ブラシブラッシングで猫をうっとりさせながら、少しずつ体に触られることにも慣らしていくことができます。
また、口のまわりは敏感な場所なので、歯ブラシブラッシングで少しずつ触られることに慣らしていき、最終的に口の中に歯ブラシを入れる歯磨きの練習にもつなげることができるそうです。歯ブラシを使って、早速みんなで実践練習。歯ブラシの刺激はさほど気にならないのか、猫ちゃん達も嫌がることなく撫でられていました。
爪切りは1日1本ペースで徐々に慣らす
室内飼育では、猫の爪切りは必要不可欠なケアです。けれども、そもそも足先は敏感な部分で、つかまれたくない場所なのです。爪を切る前に、まずは足のつけ根から足先の方向にやさしく撫でるように足先を触って爪を押し出すことに慣らす練習からスタートします。ハンドリングの練習と同じで、寝ている時や食べている時などスイッチオフの時に行うのがよいのだとか。また、一度に全部切ろうとしないで、1日に1本ずつくらいのペースで徐々に慣らしていきます。爪切りに慣れさせるためには、絶対に無理はしないこと。せっかく切るのだからとついたくさん切りたくなってしまいますが、爪先のとがっている部分だけにとどめましょう。無理やり押さえつけて爪切りをして深爪でもしようものならば、二度と家で爪切りをさせてくれなくなってしまうので失敗は禁物。とにかく、爪切りは失敗をしないように段階を踏んで慣らしていくことがとても大切なのだそうです。
設置場所と素材を見極め、
不適切な爪とぎを予防する
爪とぎの目的は、爪のお手入れ、ストレッチ、マーキングで猫にとっては大切な習性ですが、してほしくない場所での爪とぎは、飼い主さんにとってはうれしくない行動の一つ。爪とぎでボロボロにされた椅子の背もたれや柱の様子の画像を見て、「うぁ〜」という声が上がりました。不適切な場所での爪とぎを予防するためには、爪とぎ器を置く場所と素材選びが大きなポイントだと村田先生は教えてくれました。玄関ドアの近くなどのテリトリーを意識する場所や、猫が寝起きのストレッチをするので寝床の近くなどが爪とぎをしやすい場所なので、そこに爪とぎ器を置くことが効果的。また、マーキングという点では少しでも高い位置に爪痕を残してテリトリーを誇示したいので、横置きより縦置きの爪とぎ器を好む猫が多いそうです。
材質はダンボールや麻、カーペットなどいろいろなものがあり、猫それぞれの好みもありますが、爪のさやをはがしやすい引っかかりのある素材が向いています。他の場所で爪とぎをし始めてから慌てて用意しても使ってくれないことがあるそうなので、できるだけ早い時期にお気に入りのものを見つけて慣らしておきたいものです。
村田先生からのメッセージ
ハンドリングは、猫ちゃんの健康管理のためにも、飼い主さんとのスキンシップという点からも、とても重要ですから、子猫のうちからしっかり慣らしておきましょう。ただし、練習の段階でくれぐれも気をつけたいのは、無理強いはしないこと。猫ちゃんが嫌がらずに受け入れてくれるように、焦らず少しずつ慣らしていってください。