おうちでケア
〜嫌がる愛猫の目ヤニ・耳垢ケアのコツ〜
猫の目ヤニや耳垢、おうちでのケアで十分なのか、動物病院で治療したほうがいいのか気になる時もありますよね。
治療が必要な場合と、そうでない場合、楽しくケアする方法など、
神戸市にある「もみの木動物病院」の副院長、村田香織先生に教えていただきました。
お話を伺った方村田 香織 獣医師
(もみの木動物病院)
兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。
http://www.mominoki-world.net/
ライター:渡辺陽
健康ならば目ヤニや耳垢は
ほとんど出ない
猫の目ヤニや耳垢は、健康であればほとんど出ないのが正常です。もちろん健康であっても、気候や環境の変化によって少し目ヤニが出たり、耳に汚れがついたりすることはあります。また、生まれつき鼻涙管が細い、もしくは、蛇行して流れが悪くなっている猫もいます。さらに、鼻涙管が炎症を起こしている場合も。こうしたケースでは、流涙症といって涙やけが見られたり、目の周りがベタベタしているため細菌が繁殖しやすく、皮膚炎を起こすことがあります。目ヤニや耳垢が出ているのであれば、かかりつけの動物病院で一度診察してもらうといいでしょう。
日頃のボディタッチと
「正常な状態」の把握が大切
健康な猫であっても、目や耳はよく見える部位なので、ちょっとした目ヤニや耳垢でも、どうしても気になってしまう方もいるでしょう。そんな時は、アルコールを含んでいないウェットティッシュのようなものか、柔らかいガーゼをお湯で湿らせて、軽く拭いてあげます。
ケアをする時、嫌がる猫を無理やり押さえつけるのは絶対にやめましょう。猫は、生まれながらにして、足先や耳や目などの顔のパーツを触られるのが非常に苦手です。押さえつけられたというだけで、嫌な記憶が植え付けられてしまいます。日頃から背中やお腹、足、耳、顔などをやさしくボディタッチして、敏感なところを触らせてくれるように慣らしておくことが大事です。
また何よりも大切なのは、日頃から猫をよく観察して、「正常な状態」を把握しておくことです。すると、伝染性の病気などで異常な目ヤニや耳垢が出てきた時、早く気づいてあげることができます。
耳ダニや猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)
に注意しよう
猫は、耳ダニがつくとカサカサした黒い耳垢が出て、かゆいので後ろ足で耳を掻きむしります。耳ダニは耳の奥に潜んでおり、表面を見ただけでは気づきにくいので、ご自宅で判断するのは困難です。いつもと違う、おかしいなと思ったら、自己判断せず動物病院で耳道の中を診てもらいましょう。耳ダニのほか、猫はウイルス性の鼻気管炎(FVR)になることもあります。症状は、くしゃみや鼻水、涙目っぽくなるなどです。子猫の時にかかると、慢性的な結膜炎から鼻涙管が閉塞し、目ヤニが出る状態が常に続いてしまうこともあります。この病気は、細菌などの二次感染が起こると重症化することもあるので注意が必要です。膿のような目ヤニや鼻水が出ます。
嫌がる猫をどんなふうにケアすればいいのか
健康であれば、目ヤニも耳垢もほとんど出ないので、特にケアする必要はありません。ただ、結膜炎や外耳炎などの病気になってしまった場合は、ケアをしなければならないこともあるでしょう。
嫌がられないようにケアするには「ごほうび」を与えながらするのがコツです。そして、普段から体全体を触る練習をして、猫と良好な関係を築いておくことをおすすめします。処置をする時は、必ず「おりこうさんだね」とやさしく声をかけ、おやつを与えながら、耳に薬を入れたり、目薬をさしたりしましょう。近年は、一度耳に入れると長く効果を発揮する薬もあるので、獣医師に相談してみてください。重要なのは、無理矢理ケアしないということです。猫は、絶対に「自分のためにしてくれた」と思わないので、猫との信頼関係が崩れてしまいます。
応用編:目薬をさしてみよう
1.ごほうびを準備
ペースト状のおやつやお皿に塗り拡げたウェットフードなどのごほうびを用意します。猫がペロペロ舐められる位置にごほうびを持ちます。2人で行う場合は、片方がごほうびを持って鼻先の位置をコントロールするのがおすすめ。
2.やさしく声をかけながら、後ろからまぶたをそっと持ち上げる
正面から目薬をさそうとすると、目薬の先や指が目に近づいてくるため警戒してしまいます。後ろからまぶたをめくり「白目のところ」にさします。
3.「おりこう」とやさしくほめて、ごほうびのつづきを与える
ポイントはごほうびです。ごほうびを忘れずに与えることが大切。また、大声でほめるのは驚かせてしまうので逆効果です。やさしくほめましょう。
猫の正面から目薬をさそうと思うと、薬品の入った容器が目に見えてしまうので絶対に嫌がります。抱っこができる場合は、仰向けに抱っこして、後ろからまぶたをめくり、「白目のところ」にさします。必ずやさしく声をかけながらおこないましょう。沈黙したままケアをすると、緊張感が猫に伝わってしまいますし、声をかけることで猫の気をそらすことができます。ごほうびは、目薬をさす前に見せて少し与え、その後、目薬をさし、終わったら再び与えて機嫌を治すのがおすすめです。そうすると、薬を見ても嫌がらなくなるでしょう。耳のケアをする場合も、目と同じようにごほうびを使い、「おりこうさんだね」とやさしく声かけしながら行います。
日頃の正常な状態を把握しておけば、病気が原因の目ヤニや耳垢に早めに気づくことができ、ひどくなる前に治療することができます。猫のケアは嫌がる子が多いので犬より難しく、そのため、たくさん遊んだあとのおやすみタイムに行うなどの工夫も取り入れながら、嫌がられないケアを目指しましょう。