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ペットフードの種類と使い方

ペットフードにはさまざまな種類があり、その分類の仕方もさまざまです。
この記事では、いくつかの分類タイプを使い方の参考と一緒に紹介してみたいと思います。

監修迫田 順哉
(ユニ・チャーム株式会社)

ペットフードのエビデンス設計・栄養設計を行いながら、ペット栄養管理士資格の講師、日本ペット栄養学会編集委員、管理士認定委員、ペットフード協会栄養基準研究会メンバーとして学術啓蒙活動に従事。2016年よりペット栄養学会誌にて論文を連載。ペットフードのリスク評価・管理を行いながら、ペットフード安全管理者資格の講師も務める。

迫田順哉. 2017. ペットフードの栄養設計や使用における安全. ペット栄養学会誌, 20: 156-162.

https://doi.org/10.11266/jpan.20.2_156

INDEX

ペットフードには、どのような分類があるの?

「ペットフードの表示に関する公正競争規約」では、ペットフードを「総合栄養食」「間食」「療法食」「その他の目的食」と分類しています。総合栄養食を主食にすることが大切ですので、これらの使い方は「総合栄養食って何?」の記事で触れていますが、その他にもライフステージによる分類や、機能別など、その分類の仕方にはさまざまあります。例えば、水分含量によって分類すると、水分10%程度の「ドライフード」、水分含量が15~35%程度の「ソフトドライフード」「セミモイストフード」、水分含量が75%程度の「ウェットフード」とするのが一般的かと思います。
それでは、水分含量による分類の視点から特徴や使い方を見ていきましょう。

【水分含量10%程度】
ドライフードの使い方

ドライフードは、いわゆるカリカリタイプの粒状のもので総合栄養食であることが多いです。これを主食としている方が多いのではないかと思います。メリットとしては常温保管ができ、簡便で、値段が手頃なものが多い点が大きいかと思います。ドライフードはエクストルーダーという機械で製造されますが、この機械はペットフードの製造加工に非常に向いており短時間で加熱クッキングすることで、酸化など多くの栄養素への悪影響を抑えながらデンプンを消化可能な構造(α化)へと変化させます。また、大量生産が可能なので他の多くの食品加工方法に比べるとコストを抑えることが可能です。栄養設計はウェットフードに比べると、原料由来の栄養素や水分量のバラつきが小さく安定しやすい特徴があります。また、ソフトドライフード、セミモイストフード、ウェットフードに比べると便の状態も安定化しやすい傾向があります。

※写真はイメージです。

ドライフードは歯垢がたまりにくいって本当?

ウェットフードに比べて歯垢がたまりにくいとする説もありますが、その根拠の多くは試験の頭数が少なく、ドライフードとウェットフードでは歯垢の蓄積に差はないとする研究報告もあります[1]。歯の健康維持に関しては、ドライフードを主食にしているから安心というわけではなく、デンタルトリーツも補助的であるため歯磨きの習慣化が最も好ましいと思います。

【水分含量15~35%程度】
ソフトドライフード、セミモイストフードの使い方

ソフトドライフードとセミモイストフードの水分含量は近いですが、ソフトドライフードは発泡しているものをいいます。特にワンちゃんにとっては水分含量が高く軟らかいものを好む子も多く、ご褒美として与えたり、総合栄養食タイプのものであれば夏場など食欲が落ちる時期に使用したり、高齢で歯が弱くなってドライフードが食べにくくなってしまった子にとっても使いやすいかと思います。また、しつけの際などにどうしても美味しいご褒美を何度もあげる必要がある時にも、数粒ずつ与えやすいと思います。

※写真はイメージです。

開封後の保存方法と保存環境に注意が必要

使用時の注意点は、開封後の香り立ちも良く虫が寄って来やすいため、お皿を出しっぱなしにするのはやめましょう。また、冷蔵庫に入れるとデンプンが老化して固くなってしまいます。この老化したデンプンは消化が悪く、場によっては下痢をしたりすることもあるので、高温多湿だけでなく低温にもならない場所で常温保管が好ましいかと思います。ただし、脱酸素剤や窒素置換などをして防カビ剤などを使用していないものもあります。これらは開封後に常温保管するとカビが生えてくる可能性が高いので、開封後は使い切るようにするのが良いかと思います。脱酸素剤はオヤツや一部のドライフードなどにも使われていますが、開封してしまうとその効力は維持できないので注意が必要です。

【水分含量75%程度】
ウェットフードの使い方

ウェットフードは缶詰やレトルトパウチに入ったような水分含量が高いもののことをいいます。ワンちゃんにとってもネコちゃんにとっても非常に美味しいものが多く、トッピングやご褒美として適しています。また水分摂取を促す手段としても適しています。容器に密封してから加熱クッキングするため、保存料などは基本的に添加されていません。亜硝酸ナトリウムのような発色剤は使われているケースがあるので、添加物が気になる方は原材料表示を確認すると良いでしょう。

※写真はイメージです。

主食で与える場合は、総合栄養食かどうか事前にチェック

注意点としては、総合栄養食ではないものも多いので、主食とする場合は必ず確認して与えるようにしましょう。また、肉や魚を主体としているものが多く、特にネコ用ウェットフードではドライフードよりもタンパク質含量が高いと同時にリンやナトリウム含量も高い傾向があります。水分含量の高い製品ではその製品の大半が水分を占めるため、パッケージに書かれている数値だけを比べるとウェットフードのリンやナトリウム量はドライフードよりも低いように見えてしまいます。水分含量の異なる製品同士の栄養素量を比較することはできないので注意しましょう。

その他のオヤツの使い方

上記以外にお店でよく見られるものはオヤツではないかと思います。ビスケット、ジャーキー、素材乾燥品、フリーズドライなどがあり、その種類もどんどん増えていると思います。お店でこういったオヤツを選んだり、ワンちゃんネコちゃんに実際にあげるのはとても楽しいですよね。栄養学的な健康のことだけを考えるならば、総合栄養食のみを与えることが好ましいと思いますが、ワンちゃんネコちゃんにとっても美味しいものや普段と少し違ったものを食べたり、オヤツを通して人とコミュニケーションを取るのはきっと楽しい時間であり生活を豊かにするものだと思います。

※写真はイメージです。

カロリーオーバーと人用のオヤツには特に注意が必要

ただ、注意点はついついこういったオヤツは与えすぎてしまうことがあります。主食となる総合栄養食の栄養設計を崩してしまったり、カロリーの摂取過多につながってしまうため注意が必要です。最近では、カロリーや塩分量を減らしたもの、形状自体が小さいもの、小分けになったものなども増えてきており、こういったオヤツはしつけやご褒美の際にも使いやすいかと思います。もう一点の注意点は、人用のオヤツはなるべく与えない方が好ましいということです。これはカロリー摂取量などの理由ではなく、人にとって大した害はなくても、ワンちゃんネコちゃんにとっては問題となる原料が含まれていることがあるからです。例えば、チョコレートにはテオブロミンという興奮物質が含まれていますし、キシリトールガムなどはワンちゃんにとって数枚でも有害です。溶血性貧血を引き起こすような量ではありませんが、人用の調味料の多くにはタマネギや香辛料が多く含まれているものもあり、これらを使った料理やお菓子も積極的には摂取しない方が良いかと思います。ペット向けのオヤツも日々進化しておりバリエーションも増えているのでその中から選ぶか、茹でたササミなどイヌ・ネコに問題の無い素材そのものを与えるのが良いかと思います。

また、療法食も店頭やネット上で見られ自由に買えてしまいますが、これらは特定の疾患や健康状態に対して使うフードです。誤使用による健康被害も確認されていますので、必ず獣医師の指導の元で使いましょう[2]。

【参考文献】

  1. [1]Harvey, C. E., F. S. Shofer and L. Laster. 1996. Correlation of diet, other chewing activities and periodontal disease in North American client-owned dogs. J. Vet. Dent. 13: 101-105.
  2. [2]迫田順哉. 2017. ペットフードの栄養設計や使用における安全. ペット栄養学会誌, 20: 156-162.
    https://doi.org/10.11266/jpan.20.2_156