総合栄養食って何?
~主食とオヤツ、おかずの与え方~
愛するペットが毎日食べる食事。
「総合栄養食」を与える家庭が多いと思いますが、そもそも「総合栄養食」とは何かご存知でしたか。
今回は「総合栄養食」とは何か、主食とオヤツの与え方についてご紹介します。
監修迫田 順哉
(ユニ・チャーム株式会社)
ペットフードのエビデンス設計・栄養設計を行いながら、ペット栄養管理士資格の講師、日本ペット栄養学会編集委員、管理士認定委員、ペットフード協会栄養基準研究会メンバーとして学術啓蒙活動に従事。2016年よりペット栄養学会誌にて論文を連載。ペットフードのリスク評価・管理を行いながら、ペットフード安全管理者資格の講師も務める。
迫田順哉. 2017. ペットフードの栄養設計や使用における安全. ペット栄養学会誌, 20: 156-162.
https://doi.org/10.11266/jpan.20.2_156
そもそも総合栄養食って何?
総合栄養食とは、水とともに与えるだけでワンちゃんネコちゃんの健康を維持することができるフードのことです。主食には総合栄養食を使いましょう。以下にペットフードの表示に関する公正競争規約(2022年)におけるペットフードの分類を示します。
「ペットフードの表示に関する公正競争規約(2022年)」におけるペットフードの分類
- 総合栄養食
- 指定された成長段階において、ペットフードと水を与えるだけで必要な栄養バランスを満たし、健康を保つことを目的としたフード。
- 間食
- 栄養補給のみを目的としたものではなく、オヤツやご褒美、ペットとのコミュニケーション手段として与えられる、ジャーキー類やビスケット・クッキー、ガム、魚肉製品など。
- 療法食
- 獣医療において獣医師の指導のもとで食事管理に使用されることを意図したものであり、治療の内容に合わせてフード中の栄養成分を調整し、治療を補助する目的で提供されるフード。
- その他の目的食
- 総合栄養食、間食、療法食以外の総称。犬・猫に給与される、総合栄養食でない缶詰・レトルトフードや、ペット用サプリメント、ふりかけ、飲料など、食欲増進や、特定の栄養成分などを補給する目的で与えられるもの。(左上:ふりかけ/右上:レトルトフード/中央下:総合栄養食ではない缶詰)
総合栄養食は、成長・繁殖期と維持期の基準があり、分析試験や給与試験で成長段階において健康維持に必要とされる栄養基準を満たしたペットフードです。子犬・子猫期は、維持期と比較して必要な栄養素の量が多いため、子犬・子猫には、「子犬用」「子猫用」もしくは「全成長段階用」を必ず与えるようにしましょう。
食事の与え方で気をつけること
食事の与え方について具体的に注意する例をいくつか挙げてみましょう。
特にパウチや缶詰の中には総合栄養食ではないものが多く、気づかずに主食として与えてしまっているケースが意外と多いかもしれません。これらは「その他目的食」にあたり、「一般食」や「おかずタイプ」「副食」等と記載されている事もあります。メーカーによって表記の仕方は異なりますが、図1のような表記がパッケージにされていますのでぜひ確認してみてください。
また、「間食」と「総合栄養食」を勘違いして与えてしまうケースもあるかもしれません。例えば、一見「間食」のように見えるジャーキーやビスケットの中にも総合栄養食がありますが、こういった製品の給与量表記には、それのみを与える場合の量が表記されている事が多いかと思います。この表記をオヤツとして与える量と勘違いしてしまうと、普段の食事に加えて与え過ぎということになってしまいます。このようにペットフードもその形状や見た目が変化してきており外見では判断が難しくなってきているため、総合栄養食かどうかを確認する事はとても大切です。
「総合栄養食」を主食とするとともに、オヤツの与え方にも注意が必要です。
総合栄養食以外の間食、ヒトの食材、おかずタイプの一般食などは1日の摂取カロリーの20%以内、望ましくは10%以内に抑えてあげましょう。与える物にもよりますが、多く与えすぎると塩分やリンの摂取の過多になる可能性があるだけでなく、主食の栄養バランスを崩してしまいます。また普段の主食の量を減らさずにオヤツを追加するとカロリー過多となってしまうため、主食の量は与えたオヤツのカロリーの分だけ減らしましょう。
フードを与える量の目安とは
与える量はパッケージの側面や裏面に記載されている給与量表記が参考になります。また給与量表記を見る事はとても良い事ですが、特にカロリー摂取がうまくいっているかどうかはワンちゃんネコちゃんの状態を確認しながら与える事も大切です。ぜひボディコンディションスコアという指標があるので参考にしてみて下さい。
何かご褒美をあげたいけれど、カロリーバランスが気になる方は、トッピングが入ったグルメタイプの総合栄養食を選択するのも良いかもしれません。このようなフードは、例えばニボシのようなトッピングも含めて栄養バランスの設計がされており、カロリー以外にナトリウムの量などもトッピング込みで記載されています。
また療法食は、一般的なお店でも入手できてしまう現状がありますが、これらは病気の時など特定の状態に使われるフードでその栄養設計も特殊な物が多いため、自己判断で使用するのではなく、必ず獣医師の指導のもとで与えるようにしましょう。
手作りご飯と総合栄養食の
給与バランスについて
昨今、自分で調理した手作り食を与えたいと思われる飼い主も増えてきたと思います。しかし、手作り食で総合栄養食基準を満たすメニューを一般家庭で作るのはなかなか難しいかと思います。食品成分表などから計算でメニュー考案する事も出来なくはないですが、食材の栄養成分は季節やお店によっても大きく変わる可能性があります。またレシピも国内外でいくつか公開されていますが、その多くは総合栄養食の基準を満たせない事も分かっています。自分の愛情をなんとか伝えたいという気持ちはとても大切ですし素晴らしいことだと思いますので、手作り食をあげる場合は、栄養バランスを考慮して主食とはせずに、あくまで間食やトッピングとしてあげることをおすすめします。
愛するペットだからこそ
コミュニケーションをとって食事管理を
最後に飼い主側のコミュニケーションの問題も挙げておきます。パッケージ表記や給与量にも気をつけて、運動もしっかりしているはずなのに太ってきているという事はありませんか?意外と多いのが、家族内で複数の方がオヤツを少しずつ与えてしまい、その量を実は把握できていないというケースです。ご飯、オヤツをあげる係を決めるのも一つの手段ですが、家族みんながワンちゃんネコちゃんと接する事も良い事だと思いますので、この場合は人間同士できちんとコミュニケーションをとって食事管理の内容を共有する事も大切です。
また、食生活に気をつける事も大事ですが、ワンちゃんネコちゃんの健康維持や生活の充実のためにはよく遊び、よく眠る事も大切です。