床ずれ予防と老犬ケア
愛犬が年齢を重ねていく中で、思うように動き回れなくなり、
寝たきりか、寝たきりに近い状態になってしまうケースは少なくありません。
そうなってしまったとき、注意してあげなければならないのが「床ずれ」の症状です。
今回はこの「床ずれ」について、正しい知識と、やさしい寄り添い方をご紹介します。
お話を伺った先生三浦 裕子
(ペットケアサービスLet's)
ペットケアサービスLet's代表。JAPANペットケアマネージャー協会、日本ペットシッター協会、日本ペットショップ協会などで、プロ向け講座や各カルチャースクールでも講師を務める。主な著作、監修に『4歳からはじめる愛犬の健康生活習慣』『7歳からのシニア犬とのしあわせな暮らし方』がある。
http://lets-pet.com/
ライター:森田 哲生
「床ずれ」とはどんな症状なのか
「床ずれ」は「褥瘡(じょくそう)」とも言われ、私たち人間でも、長期間の入院や要介護状態が続くと発生しやすい症状。高齢犬となり思うように動けなくなったワンちゃんは、食欲や筋力が衰えて痩せてしまいます。すると、筋肉や脂肪で覆われていた骨が床に当たり皮膚を圧迫してしまいます。それが長く続くと、筋肉が損傷し、皮膚にキズが広がっていってしまうのです。
「床ずれ」が怖いのは、進行が非常に早いこと。でも、寝たきりになったら必ずかかるものではありませんし、かかってしまっても、痛みや進行を最小限に抑えてあげる方法はあります。
「床ずれ」が起きやすい場所を
寝返りでケアしましょう
「床ずれ」が起こりやすいのは、肩や肘、腰やかかとなどの出っ張った部分。寝たきりになったときに、骨が床に当たり、体圧(体重による圧力)が集中しやすい場所です。床ずれの兆候はこれらの場所の皮膚に現れます。皮膚が赤くなる、湿った状態になっている……といった症状が見られたら「床ずれ」のサインだと思ってください。寝たきりの状態が続くようであれば、小まめに皮膚をチェックする。まずはこれが重要です。毛足の長いワンちゃんは傷口が見えにくいので、しっかり皮膚を見てあげてくださいね。もう傷口ができてしまっているのであれば、その傷口が当たらないよう布で覆うなど、十分に配慮してあげてください。
寝たきりになってしまったとき、「床ずれ」のサインが出はじめたときは、上記の「床ずれ」が起こりやすい部分に体圧が集中しないように、体位の交換、いわゆる「寝返り」をさせてあげましょう。寝返りをさせる上で注意して欲しいのは、ワンちゃんのお腹を出してひっくり返してしまうこと。じっとしている時間が多くなっているワンちゃんは内臓を支えている筋肉が弱っているので、内蔵の位置が一瞬で変わってしまうと大きな負担になってしまいます。寝返りの頻度は2時間に1回程度が目安だと言われていますが、高機能な介護マットを使えば、1日3回程度、おむつの交換と同時に行うくらいで充分。飼い主さんの負担も考えると、夜中まで寝返りをさせてあげるのはなかなか大変ですから、介護マットを上手に取り入れることがポイントになると思います。
寝返り(体位変換)の仕方
- ①前足を前方へ向け、胸が地面についているフセの形の態勢からスタートしましょう。
- ②両後ろ足を揃えて、片手で膝とかかとを曲げた状態で掴む。
- ③片方の手で反対側の股関節辺りを支えながら、曲げた足をお腹の下にしまう。
- ④沿えた手を使って、体を持ち上げ過ぎず、そのままテコの原理で反対側にそっと倒す。
ポイントは、エジプトの「スフィンクス」のポーズ(足がしっかり前方へ向いている)からスタートすると、お尻を倒すときに上半身が自然についてきます。
「床ずれ」には、適切な
ペット用の介護マット選びが重要です!
「床ずれ」の大きな原因は「骨に体圧が集中してしまうこと」。そして、そのケアには寝返りが重要であることをお話ししてきましたが、こうした状態の助けになるのが、介護用マットの存在です。例えばユニ・チャームペットProの介護用マットは、犬・猫専用に開発された高反発クッションを使用して体圧を分散させてくれるので、ワンちゃんの体への負担を軽減してくれます。
また、不衛生な状態で「床ずれ」が進行すると、ハエが傷口に卵を産み付けてウジ虫が皮膚を侵食してしまう「ハエウジ症」などを引き起こすことなどもあります。「ハエウジ症」は「床ずれ」の回復を長引かせてしまう厄介な病気です。衛生面も配慮し、通気性が高く、常に清潔な状態を保つことができる介護用ベッドを選んであげましょう。さらに、衛生環境をキープする上では、洗濯しやすいものの方がワンちゃんにとってもより良いと言えます。
介護用マット選びのポイント
- ①体圧を分散させる高反発タイプを選ぶ
- ②通気性のよいものを選ぶ
- ③洗濯しやすいものを選ぶ
ワンちゃんにとって
心地よい環境を
つくってあげましょう
寝たきりの状態のワンちゃんを見守ることは、飼い主さんにとって辛い部分も多いと思います。でも、ワンちゃんだって辛いのは同じ。以前のように一緒にお散歩したり、遊んであげたりすることはできなくても、ワンちゃんの状態をしっかりと見極めてあげましょう。ワンちゃんにとって頼れるのは飼い主さんだけ。だからこそ、「今、一番心地がいい環境」を考え、整えてあげることが何よりも大切です。
この記事で紹介された商品について
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ユニ・チャームペットPro
介護用マット東洋紡との共同開発商品。犬・猫専用の高機能介護マット。