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老猫の夜鳴きが続く…
もしかして猫の認知症?

夜鳴き、徘徊、トイレの失敗…老猫になると認知症のような症状が見られることがあります。
15歳以上の猫の半数にその症候が現れるという報告もあるようです。
老猫の行動の変化の理由と治療について知っておきましょう。

監修の先生村田 香織 獣医師(もみの木動物病院)

兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。
著書に『こころのワクチン』『パピークラス&こねこ塾スタートbook』など。

ライター:金子志緒

INDEX

15歳以上の猫の半数に
認知機能の低下が見られる

猫の認知機能不全を示す症候が明らかになりました

猫の行動を調査した研究では、11~14歳の猫の28%、15~21歳の猫の49%で認知症(認知機能不全)の症候があると報告されています。ただし認知症という診断ではなく、認知機能の低下を示す症状が見られることがわかった段階。猫種による差は特にないといわれています。 とはいえ猫の認知症は研究が進んでいないため、原因も含めて明らかになっていないことも多い状況です。まずは主な症状を知っておきましょう。

認知機能不全を示す5つの症状

  • ①見当識障害
    自分のいる場所や行きたい場所がわからなくなる、室内で迷うなど
  • ②飼い主や同居動物との関係の変化
    遊ばなくなる、甘えなくなり無関心になる、逆に甘えて付きまとうようになる……など
  • ③睡眠と覚醒周期の変化
    夜間に徘徊したり鳴いたりする、昼間に寝る時間が長くなる……など
  • ④学習したことの忘却
    トイレの失敗が増える……など
  • ⑤活動性の変化
    無気力になる、刺激に対する反応が減る、逆に落ち着かなくなる……など

症状は軽度から重度まで幅広く、その種類も多様です。人の認知症のように介護が必要になるケースはまれですが、日常生活の中でしぐさや行動をチェックする習慣をつけましょう。

動物病院に認知症の相談が
少ないのはなぜ?

認知機能の低下に飼い主さんが気づきにくいかもしれません

老猫にも認知症のような症状が現れますが、監修の村田香織先生によれば、猫の飼い主さんから認知症について相談されることは少ないとのこと。猫は犬のように家族と散歩に行ったり、号令などを使ってコミュニケーションをとる動物ではないので、飼い主さんが認知機能の低下に気づきにくい可能性があります。また、猫は人や犬のように認知機能の評価法が決まっていないため、動物病院で認知症とは診断しづらいのも理由の一つです。

「猫は認知症にならない」と思い込まないこと

猫の認知症は原因がわからず相談も少ない状況ですが、「猫は認知症にならない」と思い込むのは禁物。人や犬の認知症のように介護が必要になるケースが少ないだけで、猫は認知機能不全の症状により生活の質が低下しています。さまざまな病気の可能性もあるので、小さな変化を見逃さず、早めに動物病院に相談しましょう。

腎臓病や関節炎でも
認知症のような症状が現れる

「歳だから」と決めつける前に検査をしましょう

上記の「認知機能不全を示す5つの症状」には、別の病気が隠れているケースが大半。老猫によく見られる行動の変化と病気の症状を確認しましょう。

  • トイレの失敗
    泌尿器系の病気(慢性腎臓病、猫下部尿路結石、膀胱炎)、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、関節炎炎症性腸疾患など
    これらの病気が原因でトイレに入る前に漏らしてしまうことも。また、病気による排尿時の痛みとトイレを結びつけて、「トイレ=痛くなる場所」と覚えて、トイレに入りたがらなくなることもあります。
  • 夜鳴き
    疼痛や痒みを伴う疾患、高血圧、甲状腺機能亢進症など
    活発になる、落ち着かなくなる、イライラするなどの症状が現れます。皮膚炎のかゆみによる睡眠障害で昼夜逆転が起きることも。
  • 室内で迷う
    脳腫瘍、脳血管障害、感覚器機能の低下など
    脳の病気で認知機能が低下する場合もあります。目や耳の機能が低下して家の中でもぶつかったり迷ったりする場合も少なくありません。
  • 不活発
    関節炎、感覚器機能の低下など
    関節炎の痛みで動かなくなることも。12歳以上の老猫の90%が関節炎を発症しているという報告もあります。感覚器機能の低下に不安を感じて動かなくなるケースも見られます。

どんな病気でも行動に変化が現れるため、認知症のような症状が見られたときは全身の状態を検査することが重要です。また、家族や同居動物、環境の変化などがきっかけになる場合も。猫の行動を動画や写真で記録しておくと、動物病院を受診するときに役立つでしょう。

行動変化の理由を突き止め、
不安をやわらげる

行動を止めるのではなく、原因を突き止めて対処します

認知症のような行動は、その原因となる病気の治療を行うことで解決する場合もあります。まずは動物病院での治療を優先し、そのうえで猫を落ち着かせる薬やサプリメントを利用するのも一案です。

たとえば夜鳴きが気になる場合は、不安軽減を目的として抗不安剤やセロトニン再取り込み阻害薬を使用することもあります。サプリメントを飲ませる際は、動物病院で処方されている種類が無難。ただし、猫が好まなければ与えるのは難しいので、認知機能不全に配慮した成分が含まれている高齢猫用のフードを選ぶのも良い方法です。

猫は自分で何とかできないことを、夜鳴きやトイレの失敗などの行動で人に訴えます。自分でもどうすればいいのかわからないフラストレーションを抱えていることも。今までにない行動が現れたときは動物病院に相談しましょう。

後編では予防する生活習慣や17歳の猫のケーススタディを紹介します。
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