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猫の老化と見た目に表れる
老化のサイン

猫との暮らしは、お互いに慣れると安定した生活が続きます。猫はもともとマイペースなので、
老化のサインが出てきても気づきにくく、シニア期になると些細な変化にも注意が必要です。
そんな老化のサインについて専門家にお聞きしました。

お話を伺った先生村田 香織 獣医師
(もみの木動物病院)

兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。
著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。

INDEX

「老化」とは、加齢と共に
カラダの機能が低下すること

猫の「老化」とはどういうものなのでしょうか?

猫との暮らしは、猫のニーズを満たす環境だとそれほど大きな問題もなく、楽しく快適な時間が続いていきます。猫はもともとマイペースなので、飼い主さんが忙しくてかまえない時や留守番の時間が長いことも割に平気。成猫になってしまうと、年齢によって見た目の変化もそれほどないので、ついつい愛猫の年齢を忘れがちになってしまうのではないでしょうか?そんな猫も老化がそろそろ始まる時期があります。老化とは、身体のさまざまな生理的機能が加齢に伴い減退し、元に戻らず進行していくこと。今までよりも被毛の雰囲気が変わる、動きが鈍くなってくるなど、ちょっとした違いが老化のサインかもしれません。老化のサインへの「気づき」は、飼い主さんの観察力にかかっています。まずは、いつもの状態をよく知っておくことです。日常的に愛猫の写真を撮っておき、しばらく前のものと見比べて毛並みや体型の変化などをチェックするのも良いでしょう。

猫は高齢になってから
老化のサインが表れ始める

猫のシニア期は何歳から始まるのですか?

見過ごしてしまいがちな猫の老化に気をつけるポイントとして、その猫の年齢を人間に換算して想像するとわかりやすいと思います。環境省が発表している猫と人間の年齢のめやすによると、生まれてから生後6カ月までが子猫期、生後7カ月~2歳が青少年期、3歳~6歳が成猫期、7歳~10歳が中年期、11歳から14歳が高齢期、15歳以上が後期高齢期というライフステージの分け方が実際の猫の年齢に近いと感じています。以前は、猫の年齢に関する資料が少なく、小・中型犬と同様に考えられていた時期もありましたが、犬よりも猫の方が寿命は長く、安全な室内で飼育されていると20年生きる猫も増えています。「うちの子は、今7歳だから人間だと44歳ぐらい。働き盛りね」「うちは12歳だから、人間だと64歳のおばちゃんかしら?」「15歳だから、76歳のおじいちゃん」というようにイメージしてください。使わない機能の低下は中年期から始まりますが、猫の本格的なシニア期は、11歳頃からで老化のサインもその頃からみられます。

図:猫と人間の年齢のめやす ※品種等によってもこの関係は違ってきます 出典:環境省自然環境局総務課動物愛護管理室(2009)「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」 猫…1歳は人間の15歳、2歳は人間の24歳、3歳は人間の28歳、5歳は人間の36歳、7歳は人間の44歳、10歳は人間の56歳、12歳は人間の64歳、15歳は人間の76歳

「見た目」に表れる老化のサインをチェックしてみよう

「見た目」に表れる老化のサインには、どんなものがあるのでしょうか?

些細な猫の変化で、老化のサインに気づくこともあります。まずは「見た目」から、気づきやすい老化のサインとしてチェックリストを用意しました。日頃から観察できる見た目の変化をチェックしてみてください。

見た目の変化チェックリスト

  • 歯に黄ばみがある、茶色っぽくなってきた
  • 太腿などが細くなった
  • 被毛の色が薄くなる、顔まわりに白髪が増えた
  • 被毛のツヤがなくなってきた。パサつきやすくなった
  • 爪がよく伸びるようになった
  • お腹がたるんできた
  • 口臭が出てきた
  • 目ヤニが増えた

猫は、機能低下が始まる年齢になっても見かけはさほど変わりませんが、歯には早く変化が出るのでぜひチェックしましょう。太腿などが細くなるのは筋肉量の減少でしょう。被毛の変化は栄養状態の影響や毛づくろいの回数の減少、爪の変化は爪研ぎ行動の減少などが考えられます。お腹のたるみ、口臭、目ヤニなどの老化のサインが出るのは、加齢による生理的機能の低下の影響もありますが、同時にさまざまな病気の症状の可能性もあります。老化が進むといろんな疾患のリスクが高まりますので、シニアになったら徐々に機能が低下し始めていることを意識して、愛猫の変化に注意しましょう。

飼い主さんの日々の
「気づき」で老化による
病気も早期発見!

シニア期を迎えた猫の飼い主が注意すべきことは?

先ほどの見た目の変化のチェックもそうですが、単独で自由に行動をする猫との生活では、意識しないとその変化に気が付かず過ごすことが多くなります。なので、猫の飼い主さんは意識して「家庭でできる健康チェック」を定期的に行うようにしましょう。健康チェックの方法は、猫を抱っこして優しく触りながら「被毛の状態に変化がないか」「皮膚にトラブルがないか」「目ヤニが多くないか」「耳の匂いや耳垢がでていないか」「爪が伸びていないか」「口の匂いの変化や歯石がついていないか」などの確認を行ってください。このチェックは、全身のブラッシングや歯磨きといっしょに行うのがオススメです。
実は、歯磨きをしていない猫ちゃんは、早くから歯に老化のサインが出てきます。元気に走り回っていても、口の中をチェックすると歯石がついて黄ばんだり、茶色くなっていたりします。そのまま放っておくと、歯周病になり、さまざまな臓器に影響を及ぼすことも考えられます。異常があれば、まずは動物病院に受診を。歯周病がある場合には、治療した上で少しずつ歯磨きにも慣らしていきましょう。この健康チェックは老化のサインだけでなく、病気の早期発見にもつながります。