食事・遊びなどの運動に表れる
猫の老化のサイン
運動不足とバランスの悪い食事は、猫の老化を早めます。まだまだ元気だと思っている年齢でも、
猫の健康維持のために大切な運動と食事について、一度見直してみましょう。
お話を伺った先生村田 香織 獣医師
(もみの木動物病院)
兵庫県神戸市にある「もみの木動物病院」の獣医師。犬や猫の攻撃行動、無駄吠え、不適切な排泄などといった問題行動の治療やしつけを専門に活躍中。飼い主とペットが楽しく幸せに暮らすための教育を、こころのワクチンとして執筆・講演活動を通じ多方面に取り組む。
著書に『こころのワクチン』『パピーケアスタッフBOOK』など。
猫の7歳から10歳は
運動不足が大敵の中年期世代!
健康的に年を重ねていく方法には何がありますか?
猫は7歳を過ぎると中年期に入り、あまり動かない生活になってきます。ずっと動き回っていた子猫時代が懐かしく感じますが、その動きの差はムダな労力を使わなくなったところにあります。人間も同じですが、猫も年齢とともにムダな動きをしなくなります。年齢を重ねいろんなことを経験して生活パターンが決まってくると「必要なときだけ動く」傾向が強くなり、トイレや食事以外で動くことが徐々に減って来るのです。しかし、あまり動かないラクな生活を続けていると、体がなまって硬くなり、筋肉量も減ってきます。その状態が続くと、機能低下が進み、老化が早く訪れます。中年期の人間の場合も、時間があればゴロゴロとして動かない人と、運動をよく行っている人の体では差が出てくると思います。高齢期になってもスムーズに動ける体を作るには、中年期以降も適度な運動を続けることが大事。ただし、人間の場合は自分の意志で動きますが、猫の場合は飼い主さんが運動させる工夫を行うことが必要になってきます。
愛猫の食事や行動をチェックしてみよう
はしゃぐ姿を最近見ないのは老化のサインでしょうか?
加齢と共に食事や遊びなどの運動に対しても変化が見られます。まずは、チェックリストの項目に該当するものがないか確認してみましょう。
食事・遊び運動の変化チェックリスト
- 寝ているなど、じっとしている時間が増えた
- 家の中の決まった場所にしか移動しなくなった
- 全体的に行動がスローになっている
- 高いところにあまり上がらなくなった
- 瞬発力が衰えてきた
- 遊びに誘ってもあまり乗ってこない
- 動くものへの興味が減ってきた
- よく食べて、体が重そうだ
- 食べ物の好みが変わった
- 普段のキャットフードをあまり食べなくなった
いくつ心当たりがありましたか?
成猫になると落ち着いてきて、ムダな動きをしなくなった猫ちゃんは、決まった移動しかしなくなります。この段階ではまだ老化とは限りませんが、寝ているなど、じっとしている時間が増えてきたのは、老化のサイン。そのままにしていると運動不足になり、筋肉量が減ってきます。さらに老化に伴い徐々に筋力や関節機能が低下してくると、動きがスローになる、高いところに上らなくなる、瞬発力が衰える、遊びに乗らない状態になります。食べている量が変わらないのに運動不足が続くと肥満の恐れも出てきます。また、運動をしていないので食が細くなることもあります。これらは老化のサインですが、関節炎などの疾患や、内臓機能の低下で食欲に変化が表れている場合も考えられます。
フードの与え方を工夫して、
運動不足にならない生活を!
運動不足にならないようにするには、どうすれば良いのでしょうか?
お部屋にいる猫ちゃんを、自然に運動できるようにするには、フードの与え方がポイントになります。猫はお腹が満たされ過ぎると動かず、寝てばかりの生活をしがちです。もともとネコ科の動物は、ハンターとして獲物を捕獲することに多くのエネルギーを使う食生活をしていました。しかし、食べたい時に食べられるように同じ場所に食事が置かれる生活だと、その場所に移動する程度の労力しか使いません。例えば、キャットタワーの高いところにフードを置くなど、ちょっと与える場所を変えるだけで、猫は上下運動をしてくれます。
また、家のいろんなところに、一日に与えるフードを分けて配置し、宝探しゲームのように猫に探させるのも狩猟本能を刺激し、運動不足の解消になります。2階がある家なら、わざと階段を上らせるコースにするのも良いでしょう。猫が自ら動いて見つけないとフードが得られないようにするのがコツです。中年期の猫なら、まだまだ動けるはず。高い場所に置いたフードは、ちゃんと見つけて食べているか、後でチェックしておきましょう。
年齢を重ねても健康を維持し続けるためには、
適したフード選びが大切です
シニア期の猫に適したフード選びのポイントは?
猫ちゃんの老化を感じたら、運動をさせる工夫と同時に、適したフードを与えることも大切です。猫は偏食傾向が強く、人間の食べ物や好んで食べるものばかりを与えていると栄養バランスを崩してしまいます。さらに、せっかく運動させるために高い位置においた食べ物が高カロリーのものばかりだと、肥満になる恐れもあります。食事はそれぞれの猫の年齢や体調に合った総合栄養食を主体にしましょう。しかし、パッケージに表示されている年齢になったからといって、急にフードを切り替える必要はありません。
大切なのは「うちの子に合うフードを選ぶ」ことです。高齢期は、個体差が大きく、体質や健康状態などによっても必要な栄養素が異なるため、各フードメーカーがさまざまなコンセプトで作っているのが現状です。太りやすくなるシニア猫を対象にした低カロリーフードもありますが、消化機能が低下して痩せている猫ちゃんにはカロリーがしっかり摂れるフードの方が良く、個体によって違います。老化により不足しがちな栄養素が強化されているものや、腎臓や下部尿路の健康維持に考慮したフードなども出ています。フードの特徴を調べて、愛猫の健康状態などに合わせて選び、ゆっくりと切替えましょう。